07
「周りがみんなきれいな色を持っているのが、私には許せないの」
「なにを言っているんだい。君はこんなにも鮮やかなのに──」
「それ、嫌味?」
「私には、君という人間がとても鮮烈で、美しく見えるよ。不覚にも、みとれてしまうほどに」
「惚れっぽいだけなんじゃないの?」
「人間嫌いの私を惚れさせたんだから、レディはもっと自信を持ちたまえ」
演技っぽい口調のせいで、オクルスの言葉はどうも信用ならない。
確かに人間好きには見えないのだが。
「鮮やかなんて言葉、まさか自分に向けられるとは思わなかった」
「周りに見る目がなくて、君がまだ気付けていないだけさ。君の色は仮面の下で黒ずんで、元の色が分からなくなってしまっている」
仮面の下で、オクルスは口角を上げた。
そして、こちらに手を伸ばす。その動きがあまりに自然すぎて、避けることも払うこともできない。
冷たい手が私の頬に触れた。
「私は君の仮面を剥がしたい。その下に秘めた君を見せてほしい」