01
あと何度、この光景を見ればいいのだろうか。
家屋を焼く炎に照らされ、景色は赤みを帯びている。その中に立っているのは、殺したはずの白服たちだ。
髪も服も、火の粉さえも動かない。切り取られ、停止した一場面を十三番が見せつけられるのは、すでに三度目だ。
夢だと自覚しているのに目覚められないところまで、全く同じだった。
白服たちに目をやると、それぞれ見覚えのある顔が並んでいる。
少なくとも、ここに立つ者たちは全て殺せたらしい。──だというのに、彼らが十三番へなんの感情も向けてこないのが、「過去を再現しただけの記憶」とはいえ気味の悪いところだった。
そして、もう一人。
白服たちの注目を集めながら地面に横たわる、愛していたはずの女へ視線を向ける。
名前も思い出せないが、その死に顔は強い喪失感と結びつけられている。体にあったはずの重要な臓器が、ぽっかりとなくなってしまったような錯覚。それにつられて、呼吸まで浅くなっているようだった。
白濁した瞳と目を合わせる。
仇を討った、と言うには、少しの違和感があった。
白服たちを斬ったあの瞬間、十三番はなんの感情も抱いていなかった。憎しみや怒りの感情もなく、ただ「そこにあったから斬った」と言った方が正しい。
故に、感慨はなかった。
解放されたという感覚も、同様にない。
炎に包まれた町も、白濁した瞳の女も。忘れられ記憶として、これからもずっと残っていく。そう予感できるほど、停止した景色は精密さを保ち続けている。
しかし、この記憶が「人間だった青年」を【死神】へと近づけたのならば──永く十三番の記憶にとどめておくべき原初の風景だとも言えた。
過去を突きつける記憶を前に、十三番は目を閉じる。
これから先、誰かが自分と同じ境遇に陥らないようにするためにも、まずは夢から覚める必要があった。
*
木製の天井が見えて、十三番はまず長い息を吐いた。
呼吸を整え、汗で濡れた背中を寝台から引きはがす。力が入った脇腹から鈍い痛みが生じたのは、刺された傷がまだ治っていないからだろうか。
重い頭を振って周囲へ目を向けると、室内の家具の配置が以前寝かされていた部屋とは違っていた。窓から差し込む光も弱い。どうやら神殿の一階にある部屋らしい。
相変わらず、人の気配はほとんどない。息をひそめて耳をすませても、足音一つ聞こえなかった。
軽く息を吐いて、十三番は寝台から下りる。怪我に響かないよう慎重に立ち上がる途中で、枕元の壁際に大鎌が立てかけてあるのが目に入った。