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 あと何度、この光景を見ればいいのだろうか。

 家屋を焼く炎に照らされ、景色は赤みを帯びている。その中に立っているのは、殺したはずの白服たちだ。

 髪も服も、火の粉さえも動かない。切り取られ、停止した一場面を十三番が見せつけられるのは、すでに三度目だ。

 夢だと自覚しているのに目覚められないところまで、全く同じだった。

 白服たちに目をやると、それぞれ見覚えのある顔が並んでいる。

 少なくとも、ここに立つ者たちは全て殺せたらしい。──だというのに、彼らが十三番へなんの感情も向けてこないのが、「過去を再現しただけの記憶」とはいえ気味の悪いところだった。

 そして、もう一人。

 白服たちの注目を集めながら地面に横たわる、愛していたはずの女へ視線を向ける。

 名前も思い出せないが、その死に顔は強い喪失感と結びつけられている。体にあったはずの重要な臓器が、ぽっかりとなくなってしまったような錯覚。それにつられて、呼吸まで浅くなっているようだった。

 白濁した瞳と目を合わせる。

 仇を討った、と言うには、少しの違和感があった。

 白服たちを斬ったあの瞬間、十三番はなんの感情も抱いていなかった。憎しみや怒りの感情もなく、ただ「そこにあったから斬った」と言った方が正しい。

 故に、感慨はなかった。

 解放されたという感覚も、同様にない。

 炎に包まれた町も、白濁した瞳の女も。忘れられ記憶として、これからもずっと残っていく。そう予感できるほど、停止した景色は精密さを保ち続けている。

 しかし、この記憶が「人間だった青年」を【死神】へと近づけたのならば──永く十三番の記憶にとどめておくべき原初の風景だとも言えた。

 過去を突きつける記憶を前に、十三番は目を閉じる。

 これから先、誰かが自分と同じ境遇に陥らないようにするためにも、まずは夢から覚める必要があった。


     *


 木製の天井が見えて、十三番はまず長い息を吐いた。

 呼吸を整え、汗で濡れた背中を寝台から引きはがす。力が入った脇腹から鈍い痛みが生じたのは、刺された傷がまだ治っていないからだろうか。

 重い頭を振って周囲へ目を向けると、室内の家具の配置が以前寝かされていた部屋とは違っていた。窓から差し込む光も弱い。どうやら神殿の一階にある部屋らしい。

 相変わらず、人の気配はほとんどない。息をひそめて耳をすませても、足音一つ聞こえなかった。

 軽く息を吐いて、十三番は寝台から下りる。怪我に響かないよう慎重に立ち上がる途中で、枕元の壁際に大鎌が立てかけてあるのが目に入った。

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