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コングラチュレーション

 5年後。
 春の暖かい日差しが復興の進む街に(あふ)れるとある日曜日。

 ルイは正装でかしこまりながら、マイクの前で祝辞の挨拶を述べた。
「……といろいろございましたが、その後、新郎は野戦病院で奇跡的に助かりました。これは彼の類い希なる精神と肉体がなせる技でもありますが、加えて新婦の献身的な看病と愛もあったからでございます」

 ここは披露宴会場。

 さきほど教会で式を挙げた新郎新婦が、来賓の祝辞に耳を傾ける。
 披露宴と言っても、数少ない身内と限られた友人だけの極ささやかなものだった。

 新郎は君農茂(きみのも)マモル。
 新婦は君農茂ミキ。
 もう鬼棘(おにとげ)ではないことを公表したので、君農茂の名前になったのだ。
 妹も君農茂マユリに改姓した。

 彼はあの戦いの後、野戦病院にて未来人から装置の修理完了の連絡を受けたが、元の世界に戻ることを断っていた。
「偽の俺については、あんたが責任取れよ」
 そして彼は、この並行世界に残ることを改めて決意したのだった。
「あ、それから」
「まだ何ヨ」
「並行世界を移動する時は、裸にならないようにしてくれ。変態扱いされる」

 マモルの白いタキシードは、借り物の衣装のようで皆の笑いを誘った。
 ミキの白いドレスは、皆の羨望(せんぼう)の的になった。

 一通り祝辞が終わり、歓談となった。
 BGMはミカのピアノ演奏。

 有志による余興が始まった。
 ミイとミルの手品は意外に受けた。
 ルイのセミプロ並のフルート演奏には、誰もが驚いた。
 ミカがこの日のために作曲した新しい歌の披露もあった。
 いや、彼女なら『写譜したの』と言いそうだが。
 素晴らしい演奏と歌に拍手が鳴り止まなかった。
 会場には、拍手をするロマンスグレーの紳士の姿もあった。もちろん、今日は礼服である。

 ミキは、友人の余興に微笑むマモルを横で見つめながら、5年前のことを回想していた。

(私は最後にマモルさんを救うことが出来た。……彼と違って、記憶を保ったまま何回過去へ戻ったのかしら)

 彼女はフフッと笑った。

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