あたしの朝
カラカラカラカラ…。
朝食を乗せたワゴンが、部屋の前止まる。一拍置いて、ノックの音が聞こえる。
トントン。
「おはようございます、お嬢様」
執事、有栖川の声だ。よく通るテノールな声。
「良くてよ」
「失礼致します」
カチャリ。
「おはようございます、お嬢様。今朝は如何でしょうか?」
言いながらもう、紅茶を注ぐ有栖川。流石ね。手慣れているわ。
「まずまず、といった感じかしら」
あたしは手渡された紅茶にお砂糖を二つ、入れる。
「余り入れますと、太りますよ?」
「一言多いわ!有栖川」
あたしは甘い紅茶を飲みたいのよ。放って置いて欲しいわ!
「失礼しました」
口ではそう言いながら、有栖川がそうは思ってはいないことは良く分かる。更々の今時風に整えた髪の毛。スッと整った二重の瞳。口許はいつも笑いを秘めている。
身長183センチの有栖川から見たら、155センチのあたしなんてきっと、いつまでも幼い子供の様に写るのだろう。その証拠に、高校生になった今でも有栖川はやたらと子供の扱いをしている気がする。
「本日の朝食は、ほうれん草とベーコンのキッシュ。パンは、クロワッサン、マフィン、サンドイッチなどございますが」
「じゃあ、クロワッサンで」
「畏まりました」
カチャカチャ。
手早く取り分けて、お皿を手渡してくれて。あたしは、上品にまず、クロワッサンを一口に千切った。
「本日のご予定です。まず、学園より戻られましたら、15時、ピアノのレッス16時より私と復習、宿題。その後一時間自由時間がありまし18時より夕食のお時間…その後…」
それからは聞いて無かったわ。だって、有栖川が全部やってくれるんですもの。