魔女喰い(成人式)
あの子が消えた日。
成人式が終わり鮮やかな振り袖に身にまとっている可愛いあの子。
「おまえも魔女に喰われるなよ」
「てか、マジで怖いんですけど」
「あぁ、でもおまえなら大丈夫か」
「ちょっとぉ、それどういう意味よ。もう信じらんない!」
そんな会話を交わしたのはいつの頃だっただろう。
あまりにも遠く感じる。
電話を掛ければ直ぐに聞こえたあの声は、今はもう聞くことが出来ない。行方不明。
誰に聞いても彼女の存在は確認できなかった。
早生まれで3月に二十歳になるはずだった。そう聞いている。
俺が人を真剣に探そうと思ったのは、これで2人目だ。
1人は会ったこともない魔女と言われる女。
もう1人は、時々電話で話をすることになったネット友達だ。
リアルで会ったことは二人ともない。
俺はどちらかと言うと外に出るという行為が嫌いだ。
それを俺は足が不自由だという理由を付けて面倒臭がっている。
一人黙々とネットをハッキングする日々。
いつしか声だけの存在に恋をするようになっていた。
そして、突然途絶えた連絡。
不安は大きくなっていた。
クリスマスのあの日、男と会話をして知った事。
それぞれが関連しているのか?いないのか?
全てが謎だらけで、俺の知らないところで現実は勝手に動いているようだった。
そして、いつもの様に匿名の情報屋が魔女喰い事件の機密文書を送ってきた。
去年まで厳しかった警視庁の機密文書のセキュリティは、今年に入ってとてもゆるく感じられた。