死の天使
(リコ、今、悔い改めればあなたの寿命はもれなく三十年延びます)
死神と見まがうばかりの黒い翼の天使が、私の視野に浮かぶようになって三ヶ月が経つ。
確かに40代になってはいたが、まだ、死ぬような兆候はない。
(医者になってWHOでも頑張ったし、製薬会社でも広報で活躍して、今は子宮頸がんワクチンの被害者を科学の名を騙り潰そうとしてるけど、製薬会社、アメリカの奥の院の命令だから仕方ないのよ。長いものに巻かれて生きるのは処世術のはずよ。何か間違ったことしてる?)
つい、心の中の本音がもれる。
(それは特に問題はありませんよ。ただ、あなたの名前、ナンシー・リコに問題があります)
(え? どういうこと?)
リコは驚愕の表情で問い返した。
(ナンシー・リコには天国から抹殺命令がでているのです)
(いや、これは違うのよ! ペンネームなのよ! ぐはっ!)
必死で叫ぶが、死の天使の武具<死神の鎌>は容赦なくリコに打ち降ろされた。
リコは自宅のマンションの一室で血の海に沈んだ。
(まあ、期限は三ヶ月で時間切れです。間違いなのは分かってたのですが、私も天使局の上司の命令で書類ミスを隠蔽しないといけないのです。天使も長いものに巻かれるのです。あしからず)
†
「リコ、リコ! 携帯に出なさいよ!」
アリサはスマホに向かって叫んでいた。
「今日の合コン、メンバー足りなくなったじゃない! 仕方ない、ハルカを呼ぼうか」
翌日、リコは自宅のマンションで死体で見つかるのだが、今は合コンのことしか頭にない婚活の女神アリサには知る由もなかった。
ああ、今日も平和である。