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第一話、始業式に突撃

「はあああああああっ!!」
剣の音が鳴り響く。
「シッ!!」
「はっ!」
短剣、片手剣、両剣、刀、ナックル、槍、2重鎌、自在剣…とすべての型を終わらせた。

「ふぅ…」
疲れたので休憩していると。
「お疲れ」
そう言って、雅のパートナーの細川 翔がジュースを差し出してきた。
「さんきゅ。…あれ、お前今日家でやるって言ってなかったっけ」
「いや、やっぱここで練習してた方が楽しいよ。家だと家族いるからうるさいって言われるし。それより、雅。お前さっき、なんか変な剣使ってたよな、あれなんだ?」
「あれは自在剣(じざいけん)っつってな、簡単に言うとワイヤー使って剣飛ばしたり、
自分が接近して攻撃するって感じの武器かな、正直かなりめんどい」
「なんで今更、お前2重鎌の扱いに慣れてきた時なのに」
「いいんだよ、他の武器にも手を出さないと飽きる」
「お前なぁ…」
翔が呆れた顔で雅を見る。

何故、この2人がこのようなことをしているのかというと、ただの自己満足である。
この柏木道場では今雅が使っていた武器以外の武器もあり、様々な武器を扱うことができる。
中学生というのは自分を鍛えたいお年頃なのか、夜走ったり、筋トレしたりなど、様々なことを行っているが、2人がこの道場に入った理由としては、
・お金があまりかからない
・武器を自由に使える(師匠の信用を得てからだが)
・試合等は個人個人の自由参加
の理由が挙げられる。
この二人は、ダブルスのペアで一緒に組み、世界1位(といってもあまり大きな大会ではないので参加人数は60人程度だが)となり。
個人戦では
1vs1(武器自由)…1位大岡雅、2位細川翔
シングル近接…1位大岡雅
シングル遠距離vs遠距離…1位細川翔…5位大岡雅
とまぁ、優秀な成績を残している。
ちなみに、遠距離戦というのは実際の銃を使うのではなく、ゴム弾を使用して殺傷能力のないようにしている。近接も同じようになっている。
だが、近接武器の場合。この柏木道場では特別なシステムが設けられている。
この大会、オリンピックと同じように4年に1回行われるのだが、そこで優勝して
他の同情の師匠、審査員による立ち振る舞い、礼儀、性格などを審査して。規定値より高かった場合、
近接武器はどれも本物の刃になり授与され、今後事件が発生した場所が近くならば応援を頼むというものである。
いわば特殊部隊のようなものだ。
ちなみにこの命令を破らないようプライベート以外ではほぼ監視がついている。

「そろそろ学校行くぞ」
「ああ」
二人はシャワーを浴びた後、学校へと歩き始めた。
もっとも、2人は悪ガキでは無い為、以前監察官と仲良くなった事がある。
その監察官が上層部に掛け合ったことで監視の目は和らいだらしい。…本当はどうかわからないが。


2人は学校に行く途中の坂道を下っていた。
「あのアニメやっぱ面白かったよな、最後で宿敵を自分の命と引き換えに倒すんだもんなぁ」
「かっこよかったな、それに最後のあの主人公のセリフ」
「「俺は、やるべきことをやったんだ。だから泣くんじゃねえよ。一緒に笑えねえじゃねえか」」
「ははっ、ハモったな」
「そうだな」

2人でアニメの話題で盛り上がっていたとき、急に辺りが暗くなった。
「…なんだ?これは」
「暗くなったわけじゃなさそうだな、現に光流、お前も俺が見えてるよな?」
「ああ、そうだな。だがこのままだと上下左右の感覚が狂いそうだ」
2人はすぐに落ち着き、冷静に状況を判断した。
雅は包帯を手に巻き、自分の短剣の「白雪」を持つ。翔はハンドガンのガバメントを装備している。ゴム弾だが、人に当たればかなりの痛手となるはずだ。

雅が口を開いた。
「質問、道の途中にこのような施設はありましたか」
翔が答える
「いいえ」
「この空間になるまでに何か見ましたか」
翔が答える
「いいえ」

「あなたに友達はいますか」
翔が答え……
「いい…ちょっとまて、いるわ」
「…おお、すまんつい…な」
「この状況でつい友達いるかどうか聞くとかお前大丈夫か」
「大丈夫だって…誰だ!」
不意にからんと音をたてたが反響してどこからなっていたか分からない。
「何が…起こるんだ…?」

からん…からんからんからん!!
徐々にその音が大きくなっていく。
「な、何だこれ!!」
突如、白い光が雅の前に現れる。
「お、おい!翔!!大丈夫か!!」
呼びかけるが、返事が無い。
「お、おい!!」
そして、雅は白い光に体を奪われていった……。

ぱっ
どうやら場所が変わったらしい。
「ふぅ、これであの空間ともおさらばか」
まだ目が開かない雅は自分の体に妙な違和感を感じていた。
「…あれ、体が浮いてる...?風も強いし。どういう事だ?」
徐々に目を開けていくと、そこには…
「あれえええええええええええええええ!!!!??????」
一面に広がる白い雲と隙間から見える建造物。
なんと素晴らしい景色でしょうか。
「って、そんなこと思ってる場合じゃねええ!」
そう言っている間にも雲は迫ってきている。
「いやああああああああああああああ………………」
雅の声は雲の中へと入っていった。



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――同時刻――

―――首都セルビア―――第三区画―――都立西魔法学校―――

「…え~ですから、新しい学年、新入生になったあなたたちには、存分にこの学校で修行を積んでください。そして年に2回行われる学戦大会で優秀な成績を残してください。え~ですから…」
「………長い。長すぎるよ校長先生、ねえそう思わない?アジェラ」
「仕方ないでしょ、私だって長いと思うけどなかなか終わらないんだもん。しょうがないって考えるしかないよ。シエラ」
同時刻、この魔法学校で今年高等部に入学することになったアジェラ・シンセスとシエラ・グリダフォリアは小声で話していた。

「ねぇねぇ、そろそろだって」
アジェラはシエラの言っている意味が分からず首をかしげる。
「…何が?」
「召喚された人だよ。ほら、なんか今回は人類種でしかも宝石の色が黒だったって!」
「あぁ…そのこと。私は別に興味無いわ。大体、今までの召喚してきた人全員私たち中等部より魔法適正数値が少なくて対して武道も出来なかったじゃない」
召喚とは、異世界から人を呼び寄せ、その人の力を借りて今この世界、ワイドワールドの問題を解決しようという理由から、今まで使い道の無かった召喚石が使われて異世界から召喚されるのである。
どういう理由で召喚の儀式が誕生したのか。どういうやり方で召喚をするのか。その理由を国民は知らない。

「でもさー、なんでこんなにレアの確立低いのに先生たちは必死になって召喚の儀式を行っているんだろうね」
「……あなた、授業ちゃんと聞いてる?約5年前、このワイドワールドを救ってくださった
ヨミさまがこの召喚のやり方を見つけたと言われているわ。
それに、学戦大会で優勝すれば学校側とその教師にそれなりに補助金がもらえるから先生たちも血眼になってやってるの」
「へぇ~~知らなかった~~」
「知っときなさいよ。…でもまぁ、大体のひとが異世界でダラダラと生活をしている人や運動ができなくて経済面など頭を使う仕事についてたって人だったし」
「大体、学生が召喚される確率も含まれるわけでしょ。そんなの期待しない方がましってものじゃない。」
「そうよ、期待しないほうががっかりしなくて済むわよ」
「いやまぁ、期待というか知ってすらいなかったんだけどね…」

「………………ぁぁぁ………………………………」
「ん?アジェラ、今何か喋った?」
「いいえ?何も」
「…………ああぁぁあぁ…………………」
「私にも聞こえたわ、何この声、叫び声?」
突如聞こえた叫び声に会場の生徒がざわめき出す。それに教師の声も混ざって会場は大人数の声に包まれた。
そして、轟音。

会場の舞台の天井に人一人分の穴が開き、木の破片がパラパラと落ちている。
生徒たちは天井を見上げ、そして何かが落ちたであろう舞台へと視線を動かす。

「…あああああぁぁ、死ぬかと思った………いやこれ精神的には死んでるよ…」
「貴様何者だ」
そう言って男は剣を構えて雅を睨んでいた。
「え、何処?ここ」
勿論、雅は周囲の状況を確認できる余裕などなく。驚きが10割を占めていた。

ーーー10分後ーーー

「すみません、なんで俺攻撃されてんすか?」
手足を封じられた格好をしながら教師は口にする。
「貴様はクローズワールドから来た眷族の一員だろ。ならばここで拘束しなければならない」
「えぇ…なんでこうなってんの……」


時は10分前に遡る。


「え、何処?ここ」
全く状況を掴めていない雅は取り合えず口に出してみた。
「まずは私の質問に答えろ。貴様は誰だ」
「え、自己紹介ってこと?俺は大岡雅。気が付いたら上空にいてそのまま落ちてきました。好きなものはカレー。嫌いなものはパセリ。以上?」
「以上?じゃない!何だその見え透いた嘘は!上空から来ただと?飛行魔法を使えるのは眷属か上級魔導士しかいない!」
そう言って男は剣を上段に構えこちらを見据える。
「しかし貴様は上級魔導士のリストの中に含まれていない!それに一学生がこんなところにいるわけがない!普通は入学式に出席しているはずだ!!」
「あー確かに言われてみればそうですよね」
「そうですよね。じゃないだろ!もっと危機感持てよ!…ちっ。まぁいい。とりあえず。身柄を拘束させてもらおう」
男が歩き出す。
雅はその男の左手が不自然に動いたことを見逃さなかった。
「せいっ」
「痛っ」
男の手から転がり落ちてきたのはスタンガンのようなものだった。
「貴様っ…がはっ」
男がこちらに視線を向けたがもう遅い。雅はすぐ後ろに回り込み、男の両手を固定しうつ伏せの状態で身動きが取れないようにした。


そして、今に至る。


雅は教師を押さえつけながら自分が来た天井…もとい空を見上げた。
「きれいだなぁ……」
……そう呟いた。

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