第9話:苦悩
僕は自室でぼぉ~ッとしていた。
「リンやフラン、シアの誰かを選べと言われても……」
つぶやきながら昔のことを思い出す。
初めて会ったのは幼稚園だった。
外国人の子供は当時の幼稚園でも珍しくはなく、目の色や髪の毛の色が違うんだ位にしか思ってなかった。
テレビのアニメでは普通に黒髪黒目以外のキャラクターがいたから、そういうものだと思っていた。
そして三人は親が日本に長いこともあって普通に日本語をしゃべる。
多少は外国語も出てきていたけど、基本は日本語で日本の文化に慣れていたから普通の幼馴染として小学校も中学校も一緒にいた。
僕のような存在は今の日本では普通だったから、周りでも外国人の幼馴染がいる友人もいたのでそれが当たり前だと思っていた。
「もし、誰かを選んだら僕はその人とつき合って、最後には結婚までするのかな……」
部屋の壁に小学生のころから貼ってある世界地図を見る。
そこにはリンやフランソワーズ、エンデルシアの国にマークが入れられている。
大人になったらみんなでそれぞれの国に旅行に行こうとか言っていた。
「はははは、もしそうだったらアジア、ヨーロッパ、アメリカと世界中の旅になっちゃうな……」
言いながら三人を思い出す。
リンは中国に国籍を持つ。
親の出身は香港だと言っていた。
今は近所で中華料理の店を切り盛りして、看板娘でもある。
小柄だけど物事をはっきりと言う、美少女に分類されると思う。
フランソワーズはフランス出身だけど、やはり親が貿易商で早くから日本に移住している。
金髪碧眼の美少女で、フランス人形という形容詞がぴったりとあてはまる。
ただ、その外見に対してあまりにもマイペースで周囲を驚かさせることが多々ある。
お気に入りのクロワッサンじゃなきゃ嫌だと言って、駅三つも離れたところにまで必ず買いに行くとか、たまにその行動力にも驚かされる。
エンデルシアは母親がアメリカ人のハーフ。
ほとんどアメリカに行ったことはないと言ってったけど、確かカルフォルニアが母親の故郷だったはず。
地図の位置もカルフォルニアになっているけど、三人の中で一番体格も何も良いナイスバディ―の健康優良児。
気さくな性格は母親譲りらしいけど、一番大人っぽくて美人だと思う。
ただ、スキンシップが強すぎて僕でさえたまにドキッとさせられる。
三人とも女性として改めてみれば確かに魅力的だった。
「でもなぁ……」
彼女としてつき合うってできるの?
僕はまた壁の地図を眺めながらため息を吐くのだった。