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おめでとう、新しい世界へ

死んだら異世界に転生して、新しい肉体と素晴らしい力を手に入れられるというのは、普通に考えたら、妄想であり、ありえないことだと分かるのだが、彼は、それを信じた。
そして、人々にその幸運を与えるため、「おめでとう、新しい世界へ」と叫びながらホームセンターで購入したハンマーを振り回して、人々を襲った。確実に死ぬように頭蓋骨を狙った犯行だったが、すぐに他の通行人に取り押さえられ、彼が思っていたほど、ひとは殺せなかった。そして、彼は、通り魔殺人を懺悔することなく、「犠牲者を新しい世界に導いた自分を遺族は感謝すべきだ。きっと新しい世界で、この世界以上の地位を得て、自分に感謝しているはずだ」と主張した。
遺族は極刑を望んだが、弁護士の精神鑑定が認められ、極刑ではなく、無期懲役となった。彼は、異世界に転生することなく、獄中で病死した。

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