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第40話 ヤンキーのいない『特殊な部隊』

「島田班長は本当についてますねえ、今の時期にベルルカンに出張で。張り切ってるクバルカ中佐にとって班長はちょうどいいカモですからね」 

 そんな西の言葉で誠は整備班の異変に気付いた。

 いつもなら誠をいじってくるあの整備班長のヤンキー島田正人曹長の姿が見えない。あの自己顕示欲の塊がハンガーで大人しくしていることなど考えられなかった。

「そう言えば姿が見えないけど……島田先輩がどうかしたのか?」 

 そう尋ねる誠に西は後悔をしたような表情を浮かべる。そしてゆっくりと語り始めた。

「班長は出張です。クバルカ中佐とはすれ違いで良かったなあとか言ってるんじゃないですか?今頃」

 西はあっさりとそう答えた。そしていつも島田に押さえつけられている反動か、ニヤニヤ笑いながら誠に近づいてきた。

「班長は元々パイロット志願で、クバルカ中佐の教導受けていたんですよ。ですがクバルカ中佐はああ言う人でしょ?パイロットなんか辞めちまえ!って言われてそのままパイロットを辞めて技官になったんですよ。今でも時々酒を飲んだときとか愚痴られて……」 

 エレベータが止まる。シャムの機体を見るとこちらをにらみつけるランの姿が見える。西は誠の後ろに隠れてランの視線から隠れた。

「まあがんばってくださいね」 

 シミュレータに乗り込む誠に西は冷ややかな視線を浴びせる。誠はそのまま整備の完了しているシミュレータを起動させた。点灯した全周囲モニターの一角にランの顔が映る。鋭い視線が誠をうがつ。

『神前。秘匿回線に変えろ!』 

 鋭いランの一言に誠はつい従ってアメリアの映っているモニターに映像が映らないように回線をいじった。

『西にいろいろ言われただろ?アタシが島田をどつきまわしてパイロットをあきらめさせたとかなんとか』 

 まるで会話を聞いていたように言われた誠は静かにうなづくしかなかった。

『まあ、アタシの教導は確かに厳しいと思っておいて間違いねーよ。だがな、それはオメー等のためなんだ。戦場じゃあ敵は加減なんてしてくれねーし、味方がいつも一緒に居るとは限らねー。自分のケツも拭けねー奴に何ができるってんだ。だからアタシは加減はしねーし怒鳴るときは怒鳴るからな』 

 相変わらず乱暴な言葉遣いのランがそこまで言うと、不意にこれまで見たこともないようなやわらかい子供のような表情を浮かべた。

『でもまあ、アタシは期待している奴しかぶっ叩いたりしねーよ。アタシはオメーに期待してるんだ。まあ才能の片鱗とやらを見せてくれよ』 

 そう言うとランの顔に無邪気な笑顔が浮かんだ。見た感じ8歳くらいに見えるランの見た目の年齢の子供達が浮かべるような笑顔がそこにあった。

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