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第3話(1)違和感がある街

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「ふう……おい、次の街はまだか?」

「……もうすぐ着くはずだっぺ」

 俺の問いにティッペが答える。天が苦笑する。

「結構歩きますね……」

「シルバ姉妹を撃退したことで、お礼の金をたんまりもらったっぺ? 馬車でも買えば良かったのに……」

「それほどはもらっていない。遠慮した……」

「なんでだっぺ?」

「あの街の人々も生活があるだろう。それを圧迫するようなことはしたくない」

「ふむ……」

「それは英雄にふさわしい振る舞いではないだろう?」

「ほう……」

「おお……」

 ティッペと天が俺のことを見つめてくる。恰好付け過ぎたか?

「まだ英雄にもなっていないのに……偉そうだっぺねえ……」

「こ、心構えの問題だ!」

「テンはどう思うっぺ?」

「立派な心掛けだとは思います。けど……」

「けど?」

 俺は天の方に視線を向ける。

「もらえるものはキッチリともらっておくのもプロなのかなあ……と」

「む……」

「ははっ、テンの方がしっかりしてるっぺ」

「い、いや、貢献したのは栄光さんですから、これはあくまでそれがしの考えです!」

 天が手を左右に振る。俺は軽く頭を下げる。

「勉強になります……」

「い、いえ、そんな! 止めて下さい!」

 アニメーターと声優、立場は違えど、第一線で活躍する者とそうでない者の意識の差が出たような気がする。心に刻もう……。俺たちは再び歩き出す。

「……しかし……まだ着かないのか?」

「もうすぐだっぺ」

「モンスターと遭遇しないのは幸いだが……」

「……ほら、見えてきたっぺ」

 ティッペが指し示した先に街が見えてきた。

「ほう、結構大きな街だな」

「いい感じの服屋さんとかありますかね?」

 天が自分のドレスをつまみながら笑う。転移する前のパーティードレスのままである。

「似合っているのに……」

「ありがとうございます、ティッペさん。でもさすがにこの恰好は動きにくいですよ……」

 天がティッペにお礼を言いながらも苦笑する。

「俺もこの制服から着替えたい……」

「その服は動きやすそうですが……」

「いや、なんとなく、というかかなり浮いているでしょう? この世界では」

「ああ、それはそうかもしれません……」

 俺の言葉に天は頷く。前の街ではバタバタしていたのもあって服などは見られなかった。あの街で服をゲットしたいところだ。そんなことを考えている内に街にたどり着いた。

「着いたっぺ!」

「耳元で騒ぐな……」

「確かに結構大きな街ですね。人通りも多くて……」

「まず食事をしてから買い物をしましょうか」

「ええ、そうしましょう」

 俺の提案に天は賛成してくれる。とりあえず一番大きそうな飲食店に入る。

「いらっしゃいませ……」

 店員が声をかけてくる。

「ああ、2名なのですが……」

「ちょっと待った、オラは頭数に入れないっぺか?」

「お前は空腹を感じないんだろう? というか、普通に喋るな!」

「なんでだっぺ?」

「なんでって……」

 喋らなければ、ペットで誤魔化せると思ったからだ。妖精なんてこの世界でもイレギュラーな存在かもしれないからな。知らないが。

「おや、そちら……」

「あ、ああ、ペットは入店ダメですか?」

「いえ、大丈夫です……」

 店員は頷く。

「そ、そうですか……」

「お話が出来るペットですか、珍しいですね……」

「そ、そうですね」

 少し妙に思ったが、ここはとりあえず頷いておく。

「それではこちらの席にどうぞ」

「はい」

「ご注文は?」

「えっと……と……」

 俺は天に目配せをする。

「……をお願いします」

「かしこまりました」

「……」

 しばらく間があって、店員が料理を運んでくる。

「お待たせしました」

「あ、ありがとうございます」

「……どうぞお召し上がりください」

「は、はい……」

 さっきから随分と淡々とした店員だなと思ったのだが、とにかく俺たちは食事をとる。食事を終え、支払いをする。

「……になります」

「え、ええ……」

「またのご来店をお待ちしております……」

 俺たちは店を出て、服屋がありそうなところに向かう。なかなか栄えている。先ほどの天の言葉通り、人通りも多い。だが……。

「……妙だな」

「ほう、気付いたっぺか?」

「ああ、なんとなくだが……」

「え? なにがですか?」

 天が俺に尋ねる。

「一見、楽しげな街だが……違和感がある」

「違和感?」

「感情がほとんど感じられないとも言えるというか……」

「そ、そう言われると……」

 天がキョロキョロと周囲を見回す。

「おい、ティッペ、もしかして……」

「う~ん、もう少し様子を見てみるっぺ」

「うむ……」

「あ!」

「あなたは!」

「栄光さん⁉」

「⁉」

 俺が声に振り返ると、三人の見覚えのある女性たちがそこにいた。

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