第26話 指導が必要な『特殊な部隊』の馬鹿娘達
「まあ、そこはクバルカ中佐の『鬼教官』としての腕の見せ所じゃないですか?彼等だって素質的にはかなりなものがあるそうじゃないですか。問題のなのは、どういう方向で育てていくかですよ」
高梨は自分の経験からランが彼女達三人に相当期待しているのが分かって、前向きに捉えるようにそう言った。
高梨の言葉にランはそのまま椅子の背もたれに華奢な体を預けた。
「鍛えがいが有るってことだな。そいつは楽しみだ」
ランは自分自身に言い聞かせるようにそう言った。法術云々は置いておいて、パイロットを育てることはこれまでここ東和に亡命してからは10年余り続けてきた同じ仕事だった。
人を育てる。その難しさと楽しさ。ランはどちらも味わいながらここ東和で暮らしてきた。
今こうして、育てるべき人材が与えられている。かつて自分は壊すことしかできないと思い込んでいたランは、自分が真逆の環境に居る皮肉に笑みを浮かべながら自分に励ますような視線を送ってくる高梨の方に目をやった。
「エリートのどんな愚鈍な教官が育てても一人前になるような奴よりも、アタシにしか育てられねー問題児の方がアタシとしては面白いけど。特に西園寺……あの馬鹿には相当なお仕置きが必要だな。アメリアはいい、どうせ人の話なんて聞きやしねーんだから。カウラは……あれのギャンブル依存症は医者の領域だ。アタシがどうこうできる話じゃねえ」
大画面の中でかなめがアメリアにヘッドロックをかけている。隣のコックピットの中の映像では、誠が頭を下げながら二人をなだめていた。
「神前よ、良くやったぞ。これで隊長が言ってた第一段階はクリアーだ。ミッションは次の段階に進むわけだ」
「クバルカ中佐、何を言ってるんですか?」
ランの『ミッション』と言う言葉に反応してひよこが不思議そうな表情を浮かべてランを見上げた。
「いや、なんでもねー。実験は成功。すべてオールオッケーってことだ」
満面の笑みを浮かべてランは立ち上がった。それを見てひよこもこの『05式広域鎮圧兵器』の詳細なデータの分析の仕事を再開した。