040:王都へ向けて
ルンバさんの話し相手をしながらガタゴトガタゴトと街道を進む。
「そういえばリサちゃんたちは王都まで何をしに行くんだい? 向こうだと冒険者の仕事もあまりないだろうに」
私はマジックカバンからローブと木製の杖を取り出す。
「シエラのお爺さんの形見の品です。これでシエラ用のローブと杖を作りたくて」
「へぇ。これは凄いな。ちょっと見せてもらって良いかな?」
「はい。どうぞ」
私はルンバさんに二つのアイテムを渡す。
「ほぉ。杖の方はトレントの枝かな? いや違うか? ローブの方はなんだろう。毛皮かな? いやでもこの肌触りは布みたいだし。なんだろう? こんなの見たことがない……」
そう言ってブツブツと考え込んでしまった。手綱を放すな。馬の操縦はしなくて良いのかと思って不安になるが、大丈夫っぽい。お馬さんは賢いのだ。
なので、そっちに少しだけ気をやりながらも私はボル師匠から聞いた話をする。
「杖の方は神聖樹の枝から削り出して杖にした物で、ローブは水龍という魔物の毛皮をメインにスパイダーシルクを編み込んだ物だそうです。どっちもかなりのレア物だとか」
「ほへぇ。神聖樹の枝を……神聖樹は聞いたことがあるけど、こんな感じなんだねぇ。まるでまだ生きているみたいに生命力を感じる。水龍は知らないけどスパイダーシルクかぁ。僕も扱ってみたいねぇ」
「レアだそうですよ」
「そうだねぇ。スパイダーシルクにも品質によってランクがあるからね。これはたぶん最高ランクで作られたんだろうねぇ。すごすぎて僕にはもう分からない品だよ」
「私の魔道具の師匠も驚いていました」
「へぇ。リサちゃんは魔道具士でもあるのかぁ」
「はい。去年のバザールでは安眠布団と枕二つで儲けさせてもらいました」
「景気がいいねぇ」
「そのお金でシエラの服と杖を仕立てるんです」
「なるほどねぇ」
私たちが会話をしていると、後ろの荷台にいたバッツが「おぉい」と声を掛けてきた。私は振り返り「どうしたの?」と聞くとバッツが「ん。魔物が後を付けて来てる。鬱陶しいから狩りたいんだが良いか?」と提案してきた。
私は雇い主を見る。するとルンバさん。
「うん。じゃあ邪魔な魔物の掃除をお願いしようかな。獲物次第では買い取るよ?」と言った。馬車が停まり、バッツがジンを連れて近くの林の中へと入っていった。しばらくして二人が帰って来た。それぞれの肩にはゴブリンの死体が担がれている。
「もう六体あるんだ。全部で八体分。解体を手伝ってもらっていいか?」
私が頷くとルンバさん。
「なら、この辺でいったん休憩でもしますか」と言って、林の木陰へと移動を始めた。私も邪魔にならない場所で魔石を得るために解体。そしてシエラに頼んで埋めるという処理をしていくのだった。