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037:バザール

 バザールが始まった。人がどんどんと入ってくる。私の店にも人がやってきた。そして皆が足を止めてポップ広告を見ている。この世界にはまだ無い発想だ。ちなみに広告は羊皮紙に書いてある。削ればまた使えるしね。けっこう便利なんだ羊皮紙。植物紙はまだまだ高いからね。

 一人の商人っぽい客からさっそく質問が来た。

「面白いことしてるね?」
「分かりやすいでしょ?」
「あぁ。これならひと目で幾らか分かる。ところでその安眠布団だけど、もうちょっと安くならないかな?」
「小金貨三枚と大銀貨八枚でどうですか?」
「小金貨二枚と大銀貨五枚」
「それじゃあ安すぎです。小金貨三枚と大銀貨六枚と小銀貨五枚」
「うぅん。高いなぁ。これ、初心者の品でしょ?」
「でも玄人の品なら大金貨が数枚は飛ぶって聞きましたよ?」
「そりゃあね。わかった。じゃあ小金貨三枚でどう?」
「駄目です。私だって生活がかかってますから。それにこっちのチビちゃんのもね」

 そう言ってシエラを膝の上に乗せる。すると商人さん。

「うぅん。可愛い子だな。しょうがない。じゃあ小金貨三枚と大銀貨五枚でどう?」
「もう一声、お願いします!」
「あはは。じゃあ小金貨三枚と大銀貨五枚に小銀貨三枚」
「しょうがない。それで売りましょう!」
「商売上手な娘だなぁ」

 商人がお金を渡すので私は懐にしまう。そうそうに大目玉の品が売れてしまった。後は安眠枕が二つと等級外ポーションとホットドリンクがあるだけだ。

 すると後ろで見ていた別の商人が言った。

「このホットドリンクだけど効果はどの程度かな?」
「朝早くに飲めば昼前までは効きます」
「ふむ。となるとランク的にはBランクの品かな?」
「そうです」
「君が作ったの?」
「はい!」
「そうか。分かった。全部もらえるかな?」
「え……全部ですか?」
「そう」
「は、はい! 喜んで!」

 十本全部を彼が差し出した袋に包んで入れて、お金をもらう。

「ありがとうございましたー!」

 するとシエラも「あいあとござりましたぁ」と声を出した。

「あらら。ホットドリンクも売れちゃったよ」

 残るは栄養ドリンクと安眠枕が二つあるだけだ。だがその後の客足はパッタリと途絶えた。

「今日はもう終わりかな?」
「終わり?」
「……うん。終わろっか。それより師匠の工房に行ってホットドリンクを追加しよう!」
「あいあい~」

 時刻は昼を少し過ぎた時間帯だ。今から取りかかれば夜までに五本は作れる。徹夜すれば一〇本は行ける!

 というわけで、この日の私のバザールは終了した。

 翌日。バザール二日目。午前中のうちにやはりホットドリンクが売れた。次に栄養ドリンクも全部売れてしまった。皆まとめ買いされたのだ。ついでに安眠枕も売れてしまった。

「明日どうしよっか」

 せっかくだし、もう一日頑張ってみるか!

 というわけで昼のうちにバザールは引き上げて、夜までにホットドリンクを五本と栄養ドリンクを十本作って、その日は徹夜せずに寝た。

 そして翌日。やはり昼前には全部の品が捌けたのだった。

 材料費とプラスのお礼という意味も込めてヒーリア師匠に幾らか渡すのだけど、それでもかなりの額の儲けとなった。

 生産職バンザイ!

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