ニコちゃん先生3
オールとトレイも加わり、俺たちは四人で廊下を歩き始めた。
「ルビンのおとーさんって何してる人なんだ?」
オールがルビンに訊いた。
ルビンは興味なさげに
「しらなーい」
と答えた。
こういう答え方をするように父や祖父から教育を受けているのかもしれない。
しかしオールは食い下がってルビンの父親の話を続けた。
「なんかルビンのおとーさんって、うちの父ちゃんと似てる気がすんだよなぁ。父ちゃんも昔なんか危ないことやってたらしいって兄ちゃんが言ってたんだ。昔は悪かったんだって」
その手の話は父としての威厳を見せるための武勇伝的な感じで大した意味は無さそうな気がする。
でもオールの父親の場合は、あながち嘘でもない。
「そういえば、ルー君のお兄さんって今何歳だったっけ」
トレイがオールに訊いた。
オールは指折り数え、
「えーっと、俺の三つ上だから……」
「10歳だね」
俺が答えると、オールは
「あー! 今計算してたのになんで答え言っちゃうんだよ!」
と怒って、それがなんだかおかしくてみんなで笑った。
ひとしきり笑った後、オールが突然こんなことを言った。
「そういえば兄ちゃんに聞いたんだけど、ニコちゃん先生って昔、なんでも屋? って仕事してたんだろ?」
俺はぎくりと肩を揺らした。
ふと、ルビンと目が合った。
きっと俺は情けない顔をしているのだろう。
ルビンは呆れたような目で俺を見ていた。