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第31話 お礼の品

「ルーシー様。先程の品をくださったのは、どのような殿方でしょうか」
「えーっと、何て言えば良いかな……って、待って。私、さっきのをくれたのが男性だなんて言ったっけ?」
「違うのですか? あんなに高価な品をくださったのです。相手は貴族か、ルーシー様に気がある男性のどちらかしか有り得ません」

 ふぇぇ。テレーズさんには菜園クラブの先輩としか言ってないのに……どうやって誤魔化そう。
 とはいえダニエルにお礼をするのは、確かに良い考えかもしれない。
 ただ、ダニエルが相手なら、私が生み出した食べ物の方が良さそうだけど。

「それで、お相手はどのような方ですか?」
「えーっと、陽気で、良く喋るかな」
「ふむふむ。それから? 容姿などは?」
「私よりは大きいわね。あと、何でも好き嫌いなく食べると思う」
「ほぉ。食べるのが好きと」
「そうね。食べ物なら喜ぶんじゃないかな? ただ、量より質……とまでは言わないけど、美味しいものの方が喜ぶと思う」

 という訳で、ダニエルの事をテレーズさんに伝えてみた。
 テレーズさんは、今の話から、どんな品をチョイスするんだろ?
 ちょっと楽しみにしていると……

「畏まりました。では、来週にお礼の品を持参致しますので、ルーシー様は、週末のどちらかでお伺いしたいと、先方にお約束を取り付けていただけないでしょうか」
「……ま、待って! まさか、テレーズさんが直接お礼の品を渡しに行くの!?」
「当然です。相手が男性であれば、ルーシー様から直接お渡ししてしまうと、勘違いされてしまいます。それと、私がその殿方の人となりを見させていただき、ルーシー様に相応しいか否か見極めます」
「ちょ……いいってば! 私が渡しておくから」
「ダメです。最悪、金銭でルーシー様を釣ろうとする最低な男かもしれませんので」

 あぁぁぁ、そういえば、ときメイでもテレーズさんがアメリアにアイテムをくれたっけ。
 あれって、ルーシーがアメリアに会いたくないから、テレーズさんが代わりに持って来ていると思っていたんだけど、単にテレーズさんが自分から行くって言っていただけなのねっ!?
 どうしよ。思いっきりダニエルについて話していたけど、当然ながらテレーズさんをダニエルに会わせる訳にはいかない。
 となると、やっぱりローランドさんに会ってもらう必要があるけど、さっき話した内容と違い過ぎるっ!

「あ、あのテレーズさん。実は……」
「それから、ルーシー様。あのような大きなお荷物を、何処から取り出されたのでしょうか? その小さななバッグには、絶対入らない大きさでしたし、そもそもバッグを開けてすらなかったですよね?」
「あー、それなら倉庫魔法を使っただけだよ」
「……はい? あの、倉庫魔法とは?」
「だから、空間収納っていうのかな。好きな時にアイテムを取り出せる土魔法で……あ、アイテムボックスって言った方が伝わるのかな?」

 異世界ものだと定番中の定番だし、ときメイだって、アメリアが荷物を全部持ち運んでいる訳じゃないだろうしね。
 カーソルで選べば、すぐに装備を変更出来たりするし。

「あの、そんなに凄い魔法が使えるのであれば、今すぐ魔法学園を卒業出来るのでは?」
「いやいや、そんなに凄い魔法じゃないんだってば。私以外にも使える人は居るし」
「…………本当ですか?」
「本当だってば。私、その人から、この魔法を教えてもらったんだし」
「……学園長とか、大賢者様とかでしょうか? 流石はルーシー様。入学から僅か一週間で、そのような凄い方々とお知り合いになっていたのですね」

 あれ? テレーズさんの反応が妙に変だけど。
 実際、私以外にも同じ魔法を使う人が居る……って、あれもダニエルだったぁぁぁっ!

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