第13話 ローランドさんのお誘い
授業二日目。
授業自体は火魔法の授業が相変わらずだった……というくらいで、特に何も無かったんだけど、終わりのホームルームで魔法大会の話があった。
ときメイにおける、バトルのチュートリアルね。
ダンジョンに潜る時もそうだけど、パートナーとなる男子生徒に前で戦ってもらい、女子生徒が後ろから支援するというのが基本的なバトルシステムとなる。
男子生徒は好き勝手に動くので、状況に応じて適した支援を使ってあげれば良いんだけど……そもそも私は組む相手が居ないので関係ないかな。
そんな事を思いつつ、いつもの通りに菜園クラブへ行くと、
「ルーシー。俺と一緒に魔法大会へ出場しよう」
「……はい?」
ローランドさんから予想外の言葉が投げかけられた。
「あの、魔法大会って、同じクラスの生徒としかペアを組めないのでは?」
「いや、同じクラスの者で組む者が多いが、クラブで組むのも認められているよ」
「そうなんですね……って、どうして私なんですか? 三年生同士で組んだり、生徒会として出た方が良いと思うんですが」
「あぁ、クラブでペアを組むと、ペア名にクラブ名が付くからね。菜園クラブの宣伝だよ」
あぁ、なるほど。
魔法大会はチュートリアルで負け確定のバトルだし、出場したところでアメリアに絡む事も無いから、別に構わないかなとも思う。
ローランドさんにはお世話になっているし。
火魔法の教科書でわからない所なんて、ディラック先生じゃなくてローランドさんに教えてもらっているくらいだしね。
問題は、目立ってしまう事かな。
「ちなみに、ローランドさんの目標は……優勝ですか?」
「いや、俺より強い生徒だって居るからね。そこまでは望まないよ。予選突破が目標かな」
まぁ予選トーナメントを突破して、決勝トーナメントへ進出しただけでも凄いし、菜園クラブの宣伝にはなるよね。
一年生の大会は負けイベントだけど、二年生や三年生では勝ち上がる事が出来るし、予選トーナメントを突破しただけでも、ステータスアップのアイテムが貰えるはずだ。
優勝なんてしたら目立ち過ぎてしまうけど、ゲームでも一年目に攻略対象の一人であるケヴィン王子が予選トーナメントを突破していたし、予選突破までなら大丈夫かな?
「分かりました。ローランドさんにはお世話になっていますし、私で良ければ」
「ありがとう。宜しく頼むよ」
「いえいえ。あと、私も一つお願いがありまして」
「ん、何だい?」
「何か草を刈る様な農具を借りられないでしょうか? 鎌なんてあると助かるんですけど」
魔法大会は魔法大会で良いんだけど、私としてはお米を食べたい気持ちが強い。
せっかく稲が見事に育ったから収穫したいんだけど、稲を刈り取る農具がないんだよね。
だから、菜園クラブにならあるかもと思ったんだけど……
「鎌? 草を刈り取るなら、風魔法を使った方が早くて楽だから、そういう物は無いんじゃないかな?」
「えぇっ!? でも、細かく刈り取りたいとか、風魔法を使えない人の為とかに無いですかね?」
「んー、ちょっと待ってね。一応、見てみようか」
ローランドさんから、困った表情を浮かべられてしまった。
一先ず探してくれるらしく、庭園の隅っこから少し移動し、小さな倉庫へ行くと、
「……ルーシーの言う鎌とは違うけど、これでどう?」
革の鞘に包まれたナイフが差し出される。
イメージしていたのとは違うけど、とりあえず刈り取りは出来るかな?
ローランドさんにお礼を言い、ナイフを借りると、今日は少し早めに森へ行く事にした。