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「・・・というと?」
「あいつに会った女はだいたい聞いてくる。なんでだ?」
わたしでも、何となくわかるような。「2人は、付き合い長いんですか?凄い仲良いですけど」
「凄い仲がいいかは知らんが、付き合いは長いな。かれこれ、20年にもなるか?」
「20年!?・・・お2人はいったい、おいつくなんでしょうか」
「聞いてないのか。28だ。小学校から一緒だからな。アイツがフランスに住んでた数年を除いては、何かと一緒にいるな」
「フランスって、料理の修行とかですか?」
「そんな感じだ」
初めて会った時、わたしの事ピチピチとか言うから、もっと年上だと思ってた。
「その時は、オネエ言葉じゃなかったんですか?」瀬野さんの、アイツもいろいろあったからなという、意味深な言葉が頭から離れない。
「ああ、あの時は美晴(みはる)も・・・」
正直者の瀬野さんだから、わかった。言ってはいけないことを、口走ったと。
「おばあちゃん、可愛かったですね」
「・・・アレを可愛いと言っていいのか」
「てっきり、子供だと思ってました」
「だから言っただろ、イメージは捨てろって」
「なんで、あんなになまってるんですかね」
「俺に聞くな。8割聞き取れん」
「瀬野さんは唐辛子食べたんですか?」
「・・・食べないと気ィ悪くするって聞いてたからな、遊里から。アイツは俺より先にばーさんに会ってるから、騙された」
「クッ・・・」その時の光景がなんとなく想像出来る。「瀬野さん、さっきはありがとうございます」
「あ?何がだ」
「明日の件、瀬野さんが言ってくれなきゃ認めてくれなかったかも」
「認めるも何も・・・何でアイツはああなんだ。お前が女だからってのもわかるが、過保護にも程があるだろ」
「オカンのスイッチ入りますからね」
「今時、親でもあそこまで過保護にはならないぞ」
「確かに」と笑う。
「普段はまったく人に執着しないくせに」
「やっぱり、そうなんですか。早坂さんも自分で言ってました」他人に興味が無い、と。
「だからこそ、わからん。まあ、外れくじ引いたと思っとけ」
「アハ。まあ、無関心よりは良いと思う事にします」
──"みはる" その名前の女性が、早坂さんに大きく関係しているのはわかった。
この先、わたしがそれを知る日は来るんだろうか。