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「このナイフで・・・彼女を?」その姿を想像して、身震いする。

「ナイフではない。正確には短刀だ。ちなみに俺も持ってる」そう言い、男は着ていたジャケットの内ポケットから同じような物を取り出した。長さは同じくらいだが、オネエの物より少しゴツく見える。それもまた、革張りの鞘に納められている。

「まあ、ナイフでも刀でもどっちでもいいわよ」

「どっちでもよくはないだろ。ちゃんと正式名称があるからな」

「やだこの堅物!わかればいいじゃない別に」

「よくない。それを言ったら全てが曖昧になるだろう」

「きー、やだやだこんなクソ真面目。アンタ人生大概損してるわね」

「まず、自分を見てから言え」

「どういう意味よッ!」

2人の"じゃれあい"にピリオドを打ったのは、わたしだ。
わたしは無意識に、オネエの持つ刀の鞘に触れていた。2人とも少し、驚いてるようだ。

「・・・持ってみる?」

オネエの言い方は変わらず、優しい。わたしはコクリと頷いた。そして、柄をわたしに向ける。
わたしはソレを、慎重に受け取った。

——— 重い。

「慣れるとそうでもないわよ」

この人は、わたしの考えてることがわかるのか?

「中、見てもいいですか?」

オネエは静かに頷いたけど、もう1人のほうは少し警戒しているように見えた。
わたしは構わず、でも慎重に、鞘を外す。
街灯に照らされた切先がキラリと光る。

「きれい・・・」今までわたしが手に持った刃物といえば包丁くらいだが、包丁とは全然違う。それに、形が少し反っている。

「もういいだろう」男に言われて、見惚れていた自分に気づいた。刀を鞘に戻し、オネエに返す。そのまま渡しそうになり、慌てて柄を向ける。

「欲しい?」オネエはどこか、面白そうだ。

意外だったのは、わたしの返答。「欲しいです」素直に答えていた。

「おい・・・」

「瀬野、彼女は大丈夫よ」

「しかし・・・」

「どっちにしろ、このままにしてはおけないでしょ?サバンナに子猫を放つようなもんよ」

意味をちゃんと理解はできなかったけど、オネエの言う"子猫"が、わたしの事だということだけはわかった。

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