第四十五話 「八百八狸 対 千尾狐 肆」
激戦に燃える、
「クククク。無駄。無駄。この“
キンモクが
「白尚坊の首貰ったぁ!」
後ろに
「・・・しまった幻か!」
「そう簡単に白尚坊様には近づけないわよ」
気を失った狸達の背後で、タマモが長い鞭を手にニヤリと笑う。その更に後ろには、白尚坊が鎮座している。
「フフフ」
白尚坊がニヤリと笑う。
一方の八百八狸軍の本陣にて、総大将の太一郎狸の両脇には、子狸のポン太とブンブクが、ぶかぶかの
「へへへ。こんなガキが大将の護衛とは、今回は楽勝だな」
護衛の二人を見て、狐達はニヤニヤと笑っている。
「・・・た、太一郎様には、・・・指一本触れさせねぇ!」
勇ましく前に出たポン太だが、武装した狐達を前に、
「わははは! おいガキ、何をさせねぇって?」
狐達がニヤニヤと笑いながら、ポン太に近づく。
「・・・!!」
するとポン太は、頭に葉を乗せ指を結ぶと、虎に変化し、狐達を
「なんだお前、一丁前に変化出来るのか。面白ぇ」
そう言うと、狐達が一斉に指を結ぶ。すると白煙の中から現れたのは、猿の顔に狸の体、虎の
「グルルル・・・」
巨大な化け物に
「・・・ほっほっほ。勇ましくなったのう、ポン太」
ポン太が変化した虎の後ろで、太一郎が嬉しそうに笑う。一方のブンブクは、太一郎の後ろにすっぽりと隠れて、ブルブル震えている。
「ガアァァッ!!」
化け物が牙を剥き出して、ポン太に
「ほっほっほ」
太一郎が、相変わらず穏やかな笑顔のまま、杖をついて狐達の方へ歩き出す。そのままポン太の脇を通り過ぎる際、ポン太の頭をゴシゴシと
「・・・老いぼれめ! 首は
狐達が一斉に掛かって来る。すると、太一郎がヒュッと姿を消す。狐達は目を見開く。刹那、狐の一人がバタリと倒れる。見ると完全に気を失っており、
「よくも!」
狐の一人が太一郎に刀を振る。すると、太一郎は刀を
「・・・おい大丈夫か! ・・・てめぇ何しやがった!?」
残った狐達が刀を構えながらも、ずるずると太一郎から
「ほほほ。死んではおらんから安心せえ。・・・さて、次は誰じゃ?」
太一郎が不気味に笑う。
「おい! 早く手当を!」
激しい戦場の中、八百八狸達が
「竹次さん! 早く止血しねぇと死んじまう!」
「・・・俺に構わず、・・・ゲホゲホ・・・戦え」
竹次が手当を急ぐ狸の腕を、弱々しくも力強く
「馬鹿言わねぇでくれ! あんたがいねぇと、俺達は何にも楽しかねぇ! それに、こんな弱ってるとこ見られたら
竹次の制止を無視して、ゲラゲラと笑いながら強引に手当を行う狸達に安心したのか、竹次が
一方、周囲の誰も近づけぬ程、激しくぶつかり合う
「ギャハハ! 楽しいなぁ!」
着物の上半身を脱いでいる梶ノ葉が、ゲラゲラと笑う。
「へへ、確かにな」
竹蔵もニヤリと笑い、二対の刀を構える。
「“
梶ノ葉が左右の拳を連打すると、その勢いで生まれた無数の衝撃波が竹蔵を襲う。
「おらぁぁ!!」
竹蔵が
「・・・へへ、俺との距離を取りてぇみてぇだなぁ。でなきゃ斬られちまうからな」
竹蔵が両の刀で
「・・・何ぃ?」
すると梶ノ葉は連打を辞める。竹蔵は、その隙に一気に梶ノ葉に近づき、両の刀を広げる。
「“
ガァァンッ!! 竹蔵が広げた刀を
「何!?」
竹蔵が目を見開く。
「誰が斬られるってぇ?」
逆立ちの梶ノ葉が竹蔵を睨む。そして両脚で刀を蹴り、竹蔵の刀を弾く。すかさず竹蔵が距離を取る。
「ギャハハ! どうしたぁ!? そんなに遠くに行きやがってぇ!」
梶ノ葉が、逆立ちから腕の力だけで跳び上がって着地する。
「・・・ははは。確かに、百年前よりは強くなったみてぇだな」
竹蔵はニヤリと笑い、再び二対の刀を構える。
「あぁそうだ! しかしお前とは昔
梶ノ葉がニヤニヤと笑いながら、両腕に鋼鉄の
「笑わせんな! 俺がいつ、お前に勝てねぇと言ったよ! 百年前も今もずっと、俺の方が強ぇんだよ!」
竹蔵がニッと笑う。刹那、二人は目にも止まらぬ速さでぶつかり合う。竹蔵の刀と、梶ノ葉の手甲を着けた拳が、互いに押し合う。その向こうで、二人が火花を散らす程睨み合う。
完