第四十一話 「面倒は省略」
「フフ。
白尚坊が、ニヤリと気味の悪い笑みを浮かべる。
「ええ。そうですな。それにしても、そちらは
太一郎狸が、相変わらず穏やかに微笑む。両軍が隣に立ち並ぶと、身に纏う
「ぎゃははは! お前ら、なんてボロっちいのを着てやがんだぁ? ちったぁ
千尾狐の中でも一番体が大きく、
「好きに言ってろでくのぼう。お前こそ、その
竹伐り兄弟の
「おうおう久しぶりだな竹蔵ぉ。相変わらずムカつく野郎で安心したぜぇ! その
二人が
「クククク。目には目を。歯には歯を。馬鹿には馬鹿を。クククク。類は友を呼ぶか、面白い。クククク」
千尾狐の六人の中で一番小さく、まるで
「あら人間もいるのかい? よく見りゃ
こちらも人間程の大きな
「おい
女狐の後ろからひょろりと細く、しかしウンケイや竹蔵程の
「あらごめんなさい。でも分かってるでしょ? あなたが一番よイナリ」
この“タマモ”と呼ばれる女狐と、“イナリ”という
「何だ。しゃらくみてぇな野郎がいるな。わはは」
ウンケイが笑う。
「おいウンケイ! こんなヒョロヒョロと一緒にすんな!」
しゃらくがイナリを指差す。
「んだとごらぁ!? 人間のくせに! チビのくせに!」
イナリがタマモの前とは
「あァ? お前みたいなヒョロヒョロに何が出来んだよ。そこの女に守ってもらえよあァ!?」
「上等だこらぁ! お前は俺様が殺してやるよ!」
「やってみろこらァ!」
両者、戦前から激しくやり合っている。ウンケイはその様子を笑って見ている。ウンケイの肩に乗ったブンブクは、ずっと
「・・・ダレ?」
すると、ウンケイとブンブクの隣から
「・・・こいつ、いつの間に?」
冷や汗をかくウンケイの肩にいるブンブクは、この気味の悪い狐にじっと見つめられ、気を失う寸前である。この狐も幹部の一人で、名を“コックリ”という。
「・・・」
一方の反対側、竹伐り兄弟の
「・・・」
「・・・」
この狐も竹次も何も
「・・・」
「・・・」
「・・・!?」
この無口な狐が六人目の幹部、“
「そちらも相変わらず
太一郎狸が穏やかに微笑む。
「フフ。貴様らもな。一番
白尚坊がしゃらくを見る。しゃらくは相変わらずイナリと睨み合っている。
「・・・」
すると白尚坊が、しゃらくの隣にいるウンケイの肩に乗ったブンブクを見て、何やら目を
「では、
そう言うと白尚坊が、目に届きそうな程
「ほほほ。相変わらずですな」
太一郎狸は相変わらず
「すまんのう。我らの戦いに巻き込んでしまって」
太一郎狸がしゃらく達に頭を下げる。
「何言ってんだジイさん。きっかけはおれだろ? 一緒に戦うのは当たり前だぜ」
しゃらくがニカっと笑う。
「しゃらくさん、これを」
すると狸の一人が、古い甲冑をしゃらくに差し出す。
「いやいらねェよ。動きづれェだけだからな。あんた着ていいよ」
「いえ。私はもう着てますから」
「じゃアその上に着なよ。わっはっは!」
しゃらくが笑いながら、その狸の肩をバンバンと叩く。狸は苦笑いする。
「ウンケイさんもどうぞ」
今度はウンケイにも甲冑が差し出される。
「いや、俺も大丈夫だ。ありがとな」
ウンケイがニコリと笑う。
「ブンブクさんは?」
ブンブクにも甲冑が差し出される。するとブンブクは
「おいそんなの着るなら降りろよな」
ウンケイがブンブクの後ろ首を
「久しぶりの戦だな竹次。お前ヘマするなよ?」
竹伐り兄弟の竹蔵が、弟の竹次の方をバンと叩く。
「・・・」
すると竹次が、無言のまま刀を突き出す。すると竹蔵も刀を突き出し互いの刀同士をぶつけ合う。
「よぉし! わははは」
一方の千尾狐軍、相変わらず狐達は、自分達とは違い古くボロの鎧を纏っている狸達を
「貧乏狸供め、武力もこちらが優勢。兵の数もこちらが優勢。フフフフ。賢くやらねば勝負にもならんぞ?」
白尚坊がニヤリと笑う。八百八狸軍に戻り、太一郎を中心に狸たちが円陣を組んでいる。
「およそ百年ぶりの戦じゃ。皆、覚悟はええか?」
狸達が皆、覚悟を持った眼差しを持って頷く。
「・・・あい分かった。千尾狐供をぶちのめすぞ」
「おぉぉぉ!!!」
そして両軍それぞれが位置に着くと、ブオォォ〜!! と法螺貝が吹かれると、両軍が声を上げて一斉に駆け出し、いざ戦いの
完