第三十一話 「青・黄・緑」
「“
しゃらくが、三人の大男の内、黄色の着物の男の頬に
「で、お前ら誰だ?」
「順序が逆だ」
ウンケイがすかさず小突く。
「て、テメェらが何者だ!? よくも弟を!」
青い着物の大男が、傍にあった大きな鉄の
「おれはしゃらくだって言ったろ? あァ。こいつがウンケイで、こいつがブンブクだ。よろしくな」
ウンケイとブンブクが手を振る。
「名前を聞いたんじゃねぇよ!!」
青い着物の男の後ろでは、緑の着物の男が倒れている男を心配そうに揺すってる。
「おい〜アニキ〜。大丈夫か〜?」
しかし、黄色の着物の男は応えず、完全に伸びている。
「おい大アニキ〜。アニキ死んじまった〜」
緑の着物の男は泣きながらそう言うと、再び座って酒を飲み出す。
「バカ野郎! 死んだなら酒を呑んでる場合じゃねぇだろ!」
青い着物の男は振り返って、緑の着物の男を怒鳴りつける。
「でもよぉ大アニキ〜。アニキが好きだった酒を呑むことが、アニキのトムライになると思ってよ〜」
「お、お前〜!」
すると、青い着物の男は緑の着物の男と盃を乾杯し、泣きながら酒を飲み出す。
「あいつはいい奴だった!」
「ああ、いいアニキだった〜」
しゃらく達はその様子を、呆気に取られて見つめている。
「何してんだあいつら?」
「・・・」
すると、悲しみながら酒を呑む二人の後ろ、伸びていた黄色の着物の男がムクリと起き上がる。
「いででで〜。何が起きたんだ? ん? アニキたち何で泣いてんだ?」
「ぐすっ。おう。今お前が死んじまったんで、トムライの盃を交わしてたのさ。お前もどうだ?」
「何!? 俺が死んだ!?」
黄色の着物の男は驚くが、泣きながら酒を呑む二人の姿を見て、釣られてか自らも涙を浮かべる。そして二人に混ざり、酒を呑み出す。
「そうか! 俺は死んだのか! かわいそうに!」
自らの死を悲しみ、涙ながらに酒を呑み出す。
「・・・馬鹿にも程がある」
思わずウンケイが
「・・・でもよ。アニキたちが言うんだから、俺が死んだのは間違いねぇんだろうけど。・・・じゃあ俺は誰だ?」
「ん? ・・・ぎゃああああ!!! おばけぇぇぇ!!!」
三人が飛び跳ねる。
「いい加減にしろテメェらぁ!!」
ウンケイがそばに落ちていた
「わっはっはっは!! 腹いてェ! あいつらおもしれェなァ」
瓢箪を投げつけられた三人は、頭を
「なァお前ら。一緒に天下取らねェか?」
「取れるか!!!」
バコーン!!! またも瓢箪が投げられる。
「こいつだぜアニキ〜! こいつがアニキを殺したんだ〜!」
「何!? よくも俺を! 許さねぇ〜!」
黄色の着物の男が棍棒を拾い、しゃらくに大きく振りかぶる。
「俺の仇だぁ〜〜!!」
ブオォォン!!! 勢いよく振られた棍棒をしゃらくが間一髪で避ける。
「っぶねェな! 何すんだ!」
シュッ! するとウンケイが素早く駆け、黄色の着物の男に
「ただの馬鹿ではなさそうだな」
「もうアニキを殺させねぇぞ〜」
緑の着物の男が棍棒を振りかぶり、ガキィィィン!!! 今度はウンケイが薙刀で受ける。しかし、あまりの力強さにウンケイが後ろへ飛ばされそうになる。
「くそっ! なんて馬鹿力だ!」
「何!? グリンの棍棒を止めるとは、お前も大概馬鹿力だぜ。もう一度聞くが、お前らは何者だ?」
青い着物の男の後ろへ、黄色い着物の男と緑の着物の男が立つ。
「おれはしゃらく。ここへは、酒呑童子って奴を倒しに来た」
しゃらくの後ろに、ウンケイとその肩に乗ったブンブクが立つ。
「ほう親分を? 俺らはその酒呑童子の大子分。こいつらが黄鬼のイェロン、緑鬼のグリン。そして俺が青鬼のブルンだ。酒呑童子に会いてぇなら、俺らを倒さなきゃなんねぇぞ?」
「そんじゃア遠慮なくぶっ飛ばすぜ」
するとしゃらくが、バッと構える。顔や体には赤い模様が浮かび上がると、筋肉が大きく
「ガルルル」
「何!?
青鬼らが驚く。
「おいブンブク。いつまでそこに居るつもりだ? 大将が行くぞってよ。丁度三対三だしな」
ブンブクは首をブンブンと横に振っている。
「さっきはよくもやってくれたなクソガキ!」
黄鬼が棍棒を振り回し、前に出る。
「お返ししてやるぜ!!」
黄鬼がしゃらくに棍棒を振るう。しゃらくは
「!!?」
「“
バゴォォォン!!! しゃらくが黄鬼を蹴り飛ばす。黄鬼は洞窟の壁へ勢いよく激突する。
「アニキぃ〜〜!!」
「おい
緑鬼が振り返ると、ウンケイが腰を落とし、薙刀を構えている。
「“
ズバァァァ!!! 緑鬼が吹っ飛び、こちらも壁に勢いよく激突する。
「・・・!!?」
残った青鬼が二人の強さに
「!!? よくも弟達を! この野郎ぉぉ!!!」
青鬼が棍棒を振り上げ二人に突進する。二人は腰を落とし構える。
「“
ズバァァァァン!!!! 二人の同時攻撃が
「おっしゃァ!
「なぁしゃらく。その事だけどな、こいつら酒呑童子の手下じゃねぇぞ」
「え!? だって自分で言ってたぜ!?」
「あぁ。と言うか、ここの頭は俺達の目当ての酒呑童子じゃねぇ」
「えェェェ!!!?」
ガラガラ! すると、三人が激突した洞窟の壁が、大きな音を立て、天井の岩などがパラパラと落ち始める。
「まずい暴れ過ぎた! この洞窟崩れるぞ!!」
ウンケイがブンブクを抱え、洞窟の出口へ走り出す。
しゃらくもウンケイの後を追って走り出す。すると、しゃらくが耳と鼻がピクピクと動かす。
「!!?」
しゃらくが後ろを振り返ると、青鬼がぶつかって穴が開いた壁の奥の空間に、縄で体と口を縛られた女が気を失って倒れている。
「やべェェェェ!!!」
完