第48話 見知らぬ『システム』
これまで経験した精神感応式オペレーションシステムにない精神負荷を感じながら、誠は全天周囲モニターの脇に奇妙なゲージがあることに気づいた。そのゲージは誠の搭乗と同時に一時的に跳ね上がり、そしてすぐに元に戻った。
「なんです?このゲージ。僕がこれまで乗った機体には無かったですけど……05式には何か新式のシステムが入ってるんですか?」
誠はそう言いながら全天周囲モニター中央に見慣れぬゲージを拡大して見せた。
『ああ、それは……今のところ誠ちゃんには秘密なの』
あっさりアメリアはそう言ってにっこりと笑う。彼女の糸目がなんともミステリアスな印象を誠に与えた。
「秘密って……軍事機密かなんかですか?なんで僕の機体に?」
誠はそう聞いてみるが、彼よりはるかに上手のアメリアが秘密と言うものを漏らすはずも無かった。
『それより、誠ちゃん。勝算は……無いわよね』
再びアメリアの少し残酷な言葉に誠はうなづくしかなかった。相手が人並みの腕であれば格闘戦には自信のある誠にも勝機はある。しかし、あのかなめの態度から見て、彼女の技術はそれなりに高いと見た方がいいくらいの予想はできた。
「西園寺さんは凄腕のサイボーグでしょ?一番狙撃手でしょ?まともに行って勝てる相手じゃないですよ……それに……僕は下手だし」
そんな誠の視界の中でアメリアの隣に新たな画面が開いた。
『勝算ならあるぜ』
そこに映し出されたのはランとカウラの姿だった。
「本当ですか?」
気の弱い誠にはどんな小さな勝機でも見逃すことができなかった。『人類最強』を自称するランの助言なら何とかなるんじゃないか、誠はそう思いながら彼女の画面に顔を向けた。
『基本的にアイツは接近戦は仕掛けねーからな。鉄砲があてにならずに格闘戦ばっかしてたオメーの方が格闘戦に関するノウハウの蓄積はあるわけだ』
「はあ」
ランの明らかに誉め言葉になっていない言葉に誠は苦笑いを浮かべる。
『接近戦では経験よりは瞬時にどう判断ができるかが試されるわけだ。西園寺は確かに経験豊富だが頭に血が上るところがある。その点、オメーはそう言う接近戦での判断力は剣道場でお袋に鍛えられてんだろ?オメーがおびえたりしなければその点でも互角にやれる』
ランの言葉に隣のカウラも静かにうなづいた。
確かにかなめは初対面の誠からしても直情型の女性のように見えた。
『そして……いや、これは言わねー方がいいか。まあ、オメーが使うことになる『
「はぁ?」
誠は最後にランの言った言葉を理解できずにいた。