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第一章《現代編》〖1話🍃コンビニ帰りと出会い〗

突然だが両親が嫌いだ。

成績優秀な妹は少しだけ、自慢かな。

学費やお小遣いは
くれるから、まぁいいのだが
私の気持ちをわかっていない。

それこそ、お金さえ渡していれば、
ほったらかしでも
大丈夫だと思っている。

そんな両親は、
私が十一時頃に
コンビニに行っても気にしない。

袋の中にはお菓子やお茶など
当面、部屋から出ずに済むような
保存食になりそうな物ばかりだ。

その帰り道で、まさか
百五十年前の侍に
会うとは流石に
想像していなかった……

倒れているその人物は
なんと、斎藤一だった。

新撰組の中でも、
斎藤一が大好きだった。

でもそれは、歴史上の人物で

絶対に会える人物では
なかったはずだ。

それが今、
私の 目の前に斎藤一がいる。

だが、感激している場合じゃない。

何時までもこんな所に
いたら、夏とはいえ、
風邪をひいてしまう。

かといって、成人男性を
一人で運ぶ力はない。

そこで私は救急車を呼ぶことにした。

「《名前は?》」

救急隊員に訊かれた。

本当のことを言っていいのか
一瞬、迷ったが本名を告げるしかない。

『《斎藤一です》』

震え声で応えた。

歴史上の人物と同姓同名。

普通は不思議に思うだろうが
怪しまれることはなかった。

恋人なら一緒に乗って下さいと
言われ救急車に乗った。

病院に着き、あれこれと
検査が終わって病室に
移された時には
既に、十二時半を回っていた。

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

私はいつの間にか
寝ていたようで
揺すられて目が覚めた。

ゆっくりと目を開けると
ベッドに座っている斎藤さんがいた。

『目が覚めたんですね』

よかったぁ~

『此処は?』

『病院です』

さっきの検査でも
異常はないと言われたが、
多分、頭の中は
混乱しているに違いない。

『此処は江戸じゃないな?』

疑問符はついているが、
直感的に何かを
感じたのかもしれない。

『お察しの通り、
此処は斎藤さんが生きていた
時代ではありません』

目が覚めたばかりとはいえ、
今後のことも考えると
今の内に話をしておいた方がいいと思った。

ベッドに座っている
斎藤さんに色々説明した。

※此処は現百五十年後の
未来だということ

※倒れていた斎藤さんを
見つけて病院に運んだこと

※家族とは折り合いが悪いこと

※私が恋人のふりをしたこと

『そうか、恋仲ならば
名前で呼ばなくてはな』

斎藤さんは私の言うことを
一ミリも疑うことなく 信じてくれた。

(心の中まではわからないが)

『そうですね。

私は朝代絃羽 といいます』

本当は知っているが
私に倣って、自己紹介してくれた。

『新撰組・三番組組長、斎藤一だ』

先程、寝てしまったせいか
完全に目が冴えているみたいだ。

『一君と呼んでいいですか?』

名前で呼べと言われても
実際は、かなり、年上の相手だ。

『構わない』

よかった。

『ありがとうございます』

『俺は、絃羽 と呼べばいいか?』

『はい』

何故だろう?

今日、会ったばかりなのに
一君に名前を呼ばれたら
ドキッとしてしまった。

一君にお手洗いに行ってくると告げて
病室を出て、スマホを見ると
芽依子から着信が三件と
メールが一件だけ入っていた。

時刻は丁度、一君を
此処に運んだくらいだ。
多分、寝ているだろう
芽依子にことの次第を
完結に説明する文章を
打ち送信した。

時刻は午前二時に
なろうとしている。

『遅かったな』

病室に戻ると

一君はまだ起きていた。

『ごめんなさい。

家族にメールしていて
遅くなってしまいました』

言ってから一君に
スマホの説明を
してなかったなぁと思った。

『メール?』

私の言葉を繰り返しながら
一君は聞き返してきた。

ワンピースのポケットから
スマホを取り出し、
一君に説明した。

『この小さい機械で
遠くにいる人と話ができたり、
メールを送ることもできるんです』

『メールというのは文のことか?』

流石だね。

あんな説明でメールが手紙のことだって
直ぐに解っちゃうんだね。

『そうです』

夜中というのもあり、さっきと同じように
ベッドにとっぷして寝た。

一緒に寝るわけにはいかないもんね。

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朝、病院の駐車場内に停車いるタクシーに乗り、
一旦、家に帰った。

両親は仕事に出た頃だろうか?

どうでもいい。

『芽依子、ただいま』

玄関から声を掛けると嬉しそうに走ってきた。

「お帰りなさい。

恋人さん、大丈夫だった?」

優しい子だなぁ。

『うん、疲労だってさ。

着替えたら、また
病院に行ってくるね』

現代のことを知らない
一君を病院に一人にするのは
後ろ髪を引かれる思いだったけど
着替えたかったし芽依子が心配だった。

「そっか、でも
疲労なら安静にしてれば良くなるよね?」

一君の心配をしてくれてるんだね。

『二・三日入院すれば大丈夫だって言ってたよ』

本当のことを言っても芽依子は信じないだろう。

いくら頭が良くても、人がタイムスリップするなんて
考えつかないだろうから。

私だって最初は正直、かなり驚いた。

百五十年前の人物に
会えるなんて思いもしなかった。

でも、二人の出会いには
きっとなにか意味があるんだと思う……

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