私は神になった
なりたかったから
ふとした時に
「あれ?神私のこと助けてくれなさ過ぎでは?」
「そんな神なんて必要無いのでは?」
と思ったのがきっかけ
神はいいぞう
まずは週休三日にした
人間は疲れ過ぎてるから
自由な時間が増えれば自然と疲れもとれてマシになるだろう
電車に乗る人間の数を減らした
ぎゅうぎゅうだと互いに良くないから
減らした人間はどうなるかって?
知らん
勝手にすればいい
私はそうしてる
羽毛布団を配ってあげた
ふかふかの布団の方が良く寝られるから
大きくて柔らかくて温かいものに包まれるのは
案外心地良いぞう
皆んなもやってみるといい
高いコーヒー豆を配ってあげた
いい豆は挽く前からいい匂いがする
味に深みがあって美味しいし目が覚める
コーヒー苦手な人はどうするかって?
知らん
紅茶でも飲んだらどうだろうか
二十万円を給付してあげた
こういうお金じゃないとパァッと使う気がしないだろうから
日本人ですものね
旅行に行くなり家電を買うなり
好きに使えばいいのだ
金なんて私欲の交換券に過ぎないのだから
過ぎないよな?
さてさて色々やってきたものの
人間の望みというものは
溢れ出ててきて止め処がない
困った
どうしよう
そうしているうちに気付いた
「神」はいっぱいいることに
そこにもそこにもあそこにも
見渡す限りに存在している
なるほどこれだけいればそりゃあ
何をやっても食い違いが起きるわな
全然誰も救われない理由はここにあったのだ
だから今度は神の同一化を始めてみた
周りの神をよく観察する
特性を見極めて順応するまたは順応させて
少しずつ取り込む
辺りにいる神を私だけにしていくのだ
地道な作業だがやるしかない
人間の平和のために必要なのだから
汗と涙を流して飲み込んでいく
たまにどうしても取り込めない神がいる
よく観察するが見るたびに形が変わる
それに取り込もうとしても跳ね返ってしまって無理なのもある
そういうのがあったら
仕方ないから
ぶちゅん
叩き潰しの擦り潰し
始めから無かったことにする
仕方ない
寄り添う気持ちの無い神ならこれしかない
そうしてなんとかやってきて
ようやく辺りの神は私だけになった
長かった
だが実に気持ちのいい空間ができた
私のやることなすこと全てに頷いて笑顔になってくれる
皆んな喜んでいる
私も喜ぶ
神はいいぞう
もう引き返せないくらいに
素敵な思いができている
ぶちゅん
ちくしょう
ちくしょうちくしょうちくしょう
誰かに潰されてしまった
ここまで頑張ってきたのに
私がここを作ったのに
他の神に塗り替えされてしまった
ちくしょう
しかしだ
私は諦めない
一度神になる味を知ってしまったのだ
もう二度と忘れるものか
あの甘美な時と場所を
また私は神になる
私を支える誰かのために
強く真っ直ぐな神になってみせる
震えて眠れ怠惰な神どもよ
その首掻っ切って喰らってみせよう
私は神
理想郷を体現するために
生き残りに懸ける存在であろう