シュレッダーマンはAIが怖い。
俺はシュレッダー完璧マン。
俺にシュレッダーできない書類は無い。
そんな俺は今日も一人、シュレッダー機だけが置いてある部屋で、会社中の書類をシュレッダーする。
ガガガガガガガガガ
この音を聞いていると落ち着く。
不安や心配も粉砕してくれるような気がして。
ガガガガガガガガガ
最近思うことがある。AIって怖くないか?と。
今更だと思われるかもしれない。でも今更思ったものは仕方がない。
ガガガガガガガガガ
何が怖いかというと、
それは、
ガガガガガガガガガ
いつかAIに殺される気がしてならない。
ガガガガガガガガガ
ヴゥン…
次の書類をシュレッダーする。
ガガガガガガガガガ
殺されるって何だ?暴走したAI軍団に襲われるとでも思ったか?SFの観過ぎか?
そう思われるかもしれない。
ガガガガガガガガガ
しかしそういうことではない。
俺は、AIに簡単な仕事を奪われることを危惧している。
ガガガガガガガガガ
あれか?つまりAIのせいで仕事を失って、それで落ち込んで死にたくなるってことか?
そう思われるかもしれない。
ガガガガガガガガガ
まぁそれもある。
だがそれだけじゃない。
ガガガガガガガガガ
ヴゥン…
次の書類をシュレッダーする。
ガガガガガガガガガ
俺が恐れているのは、人間に簡単な仕事をする余地が失われてしまうことだ。
これが最も恐ろしい。
ガガガガガガガガガ
簡単な仕事が無くなるとどうなるか?
難しい仕事をするしかなくなる。
ガガガガガガガガガ
するとどうなるか?
考え込む時間が増える。
ガガガガガガガガガ
するとどうなるか?
死にたくなる。
ガガガガガガガガガ
ヴゥン…
次の書類をシュレッダーする。
ガガガガガガガガガ
主観だが、考える時間が増えると、死にたくなる人が増えるように思う。
なぜか?
ガガガガガガガガガ
それは、自分の存在意義を疑ってしまうからだ。
考える時間に余裕があると、その思考に至ってしまう。
ガガガガガガガガガ
なぜ自分はこんなことをしてるのだろう、この先どうなるのだろう、こんなことをいつまで続ければいいのだろう…
どんどん思考のるつぼにはまり込んでしまう。
ガガガガガガガガガ
それで、もう自分が生きる意味なんてないじゃないか、人生八方塞がりじゃないか、そう思うようになる。
そうして頭を抱えて動けなくなってしまう。
ガガガガガガガガガ
いやそんなこと考えないが?という人もいるかもしれない。
そうですよね、ですからそういう人もいるんです。多分。
ガガガガガガガガガ
ヴゥン…
次の書類をシュレッダーする。
ガガガガガガガガガ
つまるところ、簡単な仕事のお陰で生きている人は案外多いということだ。
ただただ沈みゆく書類と機械のリズムに心を委ねる俺のように。
ガガガガガガガガガ
それをAIが奪い去って、命まで奪い去ってしまうのではないかと、ふと思った。
だからAIがなかなか普及しないのではないかと、思ったりした。
ガガガガガガガガガ
あぁ、またつまらないことを考えてしまった、馬鹿馬鹿しい、正しいはずもないのに。
いけないいけない、今はシュレッダーに集中しなければ。
ガガガガガガガガガ
俺はシュレッダー完璧マン。
シュレッダーを完璧にすることで、今日も明日も生きている。
ガガガガガガガガガ
ヴゥン…