1:30 A.M.
公園に戻ると、栗原は相変わらずブランコに乗っていたが、狐酔酒は軽く準備運動のようなことをやっていた。
多分体を温めるためだろう。
狐酔酒は僕の手元を見て顔を綻ばせた。
「お、コンポタか。いいなぁ。ナイスチョイス」
「妖風チョイスだよ。さっき火傷したけど、これおいしいね。おいしかったからキレない。命拾いしたね妖風」
「あっそ。そりゃ良かったわ」
妖風は素っ気なく言うと、公園内の滑り台の方を向いてどこか感傷的に言った。
「子供の頃はさ、滑り台とかで遊んで楽しかった記憶あるけど、なんであんなに楽しかったのかしらね」
「私たちが大人になったからじゃない?」
栗原は答えながら、小走りに滑り台に近づいて階段を上り、控えめに
「ヒーハー」
と言いながら滑った。
「うん。今でもなかなか楽しいよ? 緋彗も滑ってみなよ」
「いや、遠慮しとく」
「なに恥ずかしがってんだよ~。オレは滑るぞ~」
狐酔酒も滑り台に上った。
「僕も滑ろーっと」
僕もその後に続く。
「ふ~」
「ほ~」
あんまり叫んだら近所迷惑なので、控えめに声を出しながら滑ってみた。
楽しい。
僕たちは妖風に無言の圧力をかけた。
「わ、わかったわよ。滑りゃいいんでしょ」
妖風は気まずそうな表情で滑り台に上り、なにも言わずに滑った。
「……意外と楽しい。こんな時間だからかな。テンションがおかしくなってるのかも。もっかい滑ろ」
妖風は僕たちに見守られながらもう一度滑った。
「……楽しい」
「あら~。緋彗ったら滑り台ではしゃいじゃって可愛い~」
栗原が妖風を煽った。
「緋彗ちゃんかわい~」
「可愛い~」
僕と狐酔酒も一緒になってからかった。
「なんなのよみんなして!」
妖風は恥ずかしそうに俯いた。