11:50 P.M.
僕と狐酔酒は適当に話しながら海岸沿いを歩いた。
「にしても驚いたぜ。佐々木って夜中に出掛けるようなタイプに見えなかったからさ。ちょっと親近感湧いたわ」
狐酔酒は笑いかけるようにそう言ってきた。
「へぇ。狐酔酒からは僕がどんな風に見えてたの?」
「んー。真面目? だから深夜徘徊なんてしてんのが意外なんだけど。でもなんかミステリアスな雰囲気もあるんだよなぁ。お坊ちゃんって言われても元ヤンって言われても納得するかも」
「なにそれ」
「オレにもよくわかんね。ってかどっかで飲み物買っていいか? のど渇いた」
「いいよ」
「近くにコンビニがあるからそこ行こうぜ。お前もなんか買う?」
「もうちょい手ぶらでいたいからいいや」
「おっけー」
狐酔酒の後に続いて海岸から離れて少し歩くと、さっきのガラが悪い人たちがたむろしていたところとは違うコンビニに着いた。
狐酔酒は秘密を教えるように神妙な顔をして僕に言った。
「ここは結構安全な感じなんだけどさ、近くにあるもう1個の方のコンビニの前はいっつもヤンキー連中が占領してるから行かない方がいいぜ」
「多分さっきそこの前通ってきたよ。ガラの悪い感じの人たちがいた」
「マジか。絡まれないように気をつけろよ。めんどくせーからな」
「覚えとく」
「おう」
狐酔酒はそれだけ言うと、コンビニに入っていった。
僕はなにか買う予定ではなかったが、実際に商品を前にしたら気が変わるかもしれないので、一応狐酔酒に続いて入店した。