敵じゃない?
「という事は、まさかマリーナもそうなのか?」
と、聞いてみた所彼女は首を横に振った。
違うらしい。
じゃあ誰なんだろうと思って考えていたらケンイチが教えてくれたんだよ。
どうやら彼女の姉がその条件に当て嵌っているらしくてな、
だから彼女が生贄になることで女神様の力が手に入るっていう事なんだよ。
(なるほどそういう事だったのか、でも待てよ?
それだとおかしいんじゃないのか、だったら何故彼女は生きてたんだ、
おかしいよな、どう考えても辻褄が合わないよな)
と思っていたんだけど、その理由はすぐにわかったんだわさ、
その理由というのが彼女だけは特別だったからって事だったんだよ。
要するに女神様が彼女に自分の力を授けてくれる時にだけ生きている状態になれるらしいんだよな。
つまり言い換えるなら、生霊みたいなものなんじゃないかと思ったんだよ。
「つまり君は生霊だったってことなのかい? そんな馬鹿な」
「まあそういう事だ、 つまり、今のお前の肉体は俺が奪った魂を元の身体に戻すことによって、
生き返ったものだ、そういうわけなんだな」
そんな話を聞かされても正直実感がわかなかった。
だってそうだろ?
突然言われても信じられるわけがねえよなって思ったんだが、どうやら違ったみたいだ。
何故なら、マリーナの様子がおかしかったから、明らかに動揺してるんだよな彼女が、
これは一体どういう事なんだろうかと思い聞いてみたんだよね。
「ねえ、マリーナは知ってたの!?」
とねすると彼女は言った。
「ええ、知っていたわよ」
という答えが返ってきたのだがその表情は悲しげで寂しげでとても辛そうな感じで、今にも泣き出してしまいそうな感じだったよ。
(やっぱりそうなのか、でもなんで黙ってたんだよ?)
そう思ったんだが、口に出せないでいるとケンイチが言ったので驚いたよ。
「それは、こいつがマリーナの姉だからだよ」
それを聞いて納得したよ。
(なるほどそういう事だったのか、つまり彼女は彼女の姉の代わりだったという事なんだな)
そう思うと無性に腹が立ってきたぜ、だってそうだろ?
今までずっと騙されていたんだからな!
そんな怒りをぶつけるように俺は叫んだんだよ。
「ふざけんな!」
ってな、そしたらケンイチが言ってきたんだ。
「ふざけてなんかいないさ、俺は本気だ」
ってね、そして続けてこう言ったんだ。
「今まで騙していて悪かった、だがこれも全ては世界を救う為なんだ、分かってくれ」
と言ってきたんだが、俺は納得できなかった。
だって、しょうもない理由だからだ。
そんなことで今までの俺を裏切ったっていうのかよ!
そう思うと余計に腹が立ってくるんだよな、だってそうだろ?
俺は今まで真面目に生きてきたんだ、それを台無しにしやがって許せないんだよって思ったからだ。
まあそんな感じの事をケンイチに言った所、納得してくれたのかなと気になったんだが
特に変わった様子もなかったんで安心したんだけど、そこで再び話しかけられたんだよケンイチにさ。
「さてと、もうおしゃべりは済んだかな? それじゃあそろそろ死んで貰おうか」
(はっ!?)
どうしよう、困ったことに腹を剣で刺された事により血が流れてきて意識が遠のいてゆく。
このままだと不味い、そう思った俺は必死に抗おうとしたのだが無駄だった。
傷口が余りにも深かったからだ。
その時、彼は叫び声を上げたので驚くと同時に静かになった途端意識を失ったのだ。
(ここはどこだ?)
そう思いつつ目覚めた俺の目の前に広がっていたのは天井とそして知らない天井だったからだ。
ここは診療所じゃなさそうだし、一体ここはどこなんだろうと思っていたんだがしばらくして思い出したのだ。
そうだ俺って確か死ぬ直前に刺されていたはずじゃ、
そう思いながら体を起こして周りを見たところでようやく全てを把握したんだよ。
(そういう事だったのか……というかマジで死んでるのかコレ!?)
そう思いながら、自分の体を触ってみたんだが、やはりというか何というか、
体が透けていた。
(マジかよ……)
そう思いつつ俺は立ち上がると部屋中を歩き回ったのだが、特に変わった様子はなかったな。
(一体ここはどこなんだ?)
そう思った瞬間だったんだよ!
突然声が聞こえてきたんだ。
驚いて振り返るとそこには一人の男が立っていたのだ。
「やあ、目が覚めたようだね」
その男を見た瞬間、俺は思ったんだ。
(こいつが俺を刺した奴なのか?)
そう思った瞬間怒りが込み上げてきたんだが、それと同時に恐怖心もあったんだよ。
何せ相手は剣を持っているからな、下手に動くと斬られると思ったんで様子を見ることにしたんだよ。
そうするとその男は言ったんだ。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」
って言ってきたんだけど、明らかに怪しかったから警戒していたんだよな。
そしたら突然、話しかけてきたんだよそいつがさ!
「僕は、君の敵じゃないよ」
って言ってきたから思わず聞き返したんだよ。
そしたらさ、そいつが笑いながら答えたんだ。
「ああ、ごめんごめん自己紹介がまだだったね、私の名前はエルゼリアって言うんだよろしくな!」
(いやいや待て待て名前なんてどうでもいいわ!)
って思ったんだが、とりあえず話を聞いてみることにしたのさ。
だって気になるじゃんかよ!?
一体誰が俺を刺したんだろうってさ?
それに気になった事があるんだよな、それはなんで生きてるのかって事なんだよ。
まあでも今はそんな事よりも目の前の事に集中する事にしたんだけどね、
それで聞いてみたんだよ質問してみたんだけど答えてくれたんだけどさ、
まさかこんな返答が来るなんて思ってもいなかった。