第1話 宇宙のかなたにあった『ジパング』
『人は宇宙にロマンを感じていた』
『無限の可能性がそこにあると信じていた』
『だが、そこに弱者が持つ巨大な利益があると知った時、ロマンは征服欲に切り替わった』
『これは地球人と遅れた文明を持った異星人との出会いの物語』
『それは不幸な出会いの物語』
21世紀末に『相対性理論』の矛盾が指摘されて、もうすでに長い年月が経とうとしていた。地球人類の移動速度は新たに開発された移動手段『亜空間跳躍』により光速の壁を越え、その活動圏は広く外宇宙へと広がっていった。
異星系への移民。そんな夢のような話は相対性理論の崩壊と光の速度を超えた移動手段『亜空間跳躍』の獲得と同時に地球人類に強制的に訪れることになった。
21世紀は『絶望の世紀』とのちの時代から呼ばれた。2回にわたる極東核戦争、ヨーロッパ限定核戦争、中東核戦争、南アフリカ核戦争と言う幾多の核戦争で50億の人口を失った。多くの国が地図から消えた。
その世紀はアメリカを中心とした強国だけが生き残る弱肉強食の時代だった。
度重なる戦術核の使用で大地は傷つき戦場となった地域は長い間放射能で汚染された。残留放射能により居住不可能な地域が広がり、人々はそんな居住権の狭まった地球に絶望していた。
指導者の暴走による戦争の百年は、有権者の意識を完全に書き換えることとなった。社会構造の変化も進み、対立を煽るだけの指導者を生み出した民主主義は崩壊し、戦争で甘い汁を吸う一部の超富裕層だけの為に存在するシステムだった資本主義は破綻した。
絶望した人々は、ちょうどローマ帝国が破綻した古代のヨーロッパのように、それまでの国家間秩序は崩壊して、権威としての『国家』が全てを支配する世界が地球に訪れていた。
そんな地球人達の『国家』は国家の奴隷と化した庶民の不満を解消するために、新たな移動技術『亜空間跳躍』を駆使した異星系への移民に希望を持たせることでぎりぎりの生存を維持している国民に夢を与えることを考えた。
そんな地球人達が初めて植民に成功した惑星において、地球人類は初めて地球外知的生命体と遭遇した。
そこはまさに夢の世界、『黄金の星』と呼ばれることになった。
彼等異星人、自らを『リャオ』と名乗る遅れた文明を持った人々の住む遼大陸には地球には存在しない規模の良質な金鉱山をはじめとする想像を絶する量の資源が眠っていた。
そこはまさに『大航海時代』にヨーロッパ文明が目指した『ジパング』そのものだった。
地球で支配階級にすべての自由と権利を奪われ、『宇宙開拓』の美名の下派遣された『棄民』達は、自分達と瓜二つの異星知的生命体を見下しながらも、彼等を奴隷として利用してこれらの豊かな資源を採掘することを開始した。