バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

神様拉致監禁

「おい、そこの娘、儂を誰だと思っておる」
「神様でしょ、わかってるわよ」
「神にこんなことして、神罰が怖くないのか」
「彼を手に入れられるなら、なんでもするわよ」
「だいたい、恋愛運最高なんておみくじ引かせておいて、調子に乗って告白して思いっきり玉砕したわたしが、そのおみくじを売っていた神社の神を捕らえて、おみくじ通り、彼と結ばれるように請求するのってすごく筋が通ってると思うけど」
「いやいや、そなた失恋して良かったと思うぞ。そなたの惚れた男、現在三股の最中じゃ」
「さ、三股って、何を急に」
「ほれ、そなたの由依とかいう友達とか、三人も同時に手を出して、ちょうど今、その男の自室で三人の女たちが男の部屋でかち合い、修羅場の真っ最中だ」
「何言ってるの、あんた?」
「これでも儂は神様じゃぞ。千里眼ぐらい持っておる。お主は、その男にフラれてよかったのじゃ、でなければ、お前さんも四股で、その修羅場の只中で、男を殺して自分も死ぬとか叫んでたかもしれんぞ」
「なに、そんなすごい、修羅場になってるの」
「うむ、男はおろおろするだけで。女のひとりは泣きわめくだけで、女二人がつかみ合ってる。こりゃ、すごい」
「彼の部屋ね」
「おお、すごい光景だぞ」
「警察に連絡するわ。彼の部屋が騒がしいって。警察官が来たら冷静になるでしょう。いくら三股してても、一応惚れた男だし、殺し合いにでもなったら、後味悪いから」
「ほぉ、なかなか、いい判断じゃの」
「断っておくけど、あんたは、恋愛運最高を成就するまで解放しないから」
「うむ、そなたが生涯の連れ合いと出会うのが、いつかは儂でも分からんが、それまで拘束すると」
「そうね、もし、数年経っても出会えなかったときは・・・」
「ま、まて、神社の御神刀なんぞ、持ち出すでない」
「大丈夫、ちゃんと数年後私が幸せになったら、解放してあげるから」
つまり、身代金を要求する誘拐犯と同じで、身代金が手に張らなければ命の保証はしないというやつだ。
で、数年ほど一緒に暮らすうちに、私たちふたりで、それなりに幸せになっていた。

しおり