575 夜のお客様
自分たちでがんばって絞ったミルクをふんだんに使ったご飯やデザート、親方たちが焼いてくれた美味し~いお肉をた~くさん食べて
「ぽんぽん、ぴちち」なでなで
ぴゅいきゅい『『ぴちち』』けふっ
『おなかいっぱいだね~』ぽんぽん
『『『『『おいしかった~』』』』』はふぅ~
みんなのぽんぽんがぷっくりぱんぱん。
『もううごけないでしゅ~。ととしゃま、かにょこ、おとまりちたいでしゅ~』
鹿の子ちゃんのぽんぽんも床につきそうです。たしかにあれじゃ動けないね。
『そうだな。神様やゲンさんの許可を頂ければ⋯⋯』
〖かまいませんよ〗
〖だよな〗
『そもそも、みんな泊まってくと思ってたぞ』
『あ、ありがとうございます』
『わ~いでしゅ♪ありがとでしゅ♪』
「やっちゃあ♪」
ぴゅいきゅい『『いっしょ~♪』』
鹿の子ちゃん家族もお泊まり決定。ちびっこたちは幸せ気分でいつもよりちょっと早めにお布団へ。もちろん鹿の子ちゃんもお客様用お布団を敷いてサーヤたちと一緒に寝んねです。
きゅるる『これは鹿の子専用にしよう』
『きぬしゃま、ありがとでしゅ!』
これでいつでも鹿の子ちゃんお泊まりできるね!
『あらあらまあまあ、更に賑やかな寝室になったわね。みんな明日はちょっとおね坊さんして大丈夫よ』
『そうだな。みんながんばったからな。しっかり寝て疲れをとるんだぞ』
おばあちゃんとおいちゃんが、みんなにタオルケットをかけながらぽんぽんってしてくれます。
「あ~い!にぇりゅこは」
『育つだよね~』
「にぇ~♪」
さすがハク!分かってるね。
『そうだぞ。寝る子は育つだな』ぽんぽん
『おやすみなさい』ぽんぽん
「おやしゅみにゃしゃい」
ぴゅいきゅい『『おやすみなしゃ~い』』
『おやすみ~』
『『『『『おやすみ~』』』』』
みんな仲良く寝んね⋯⋯
そして⋯⋯
〖来るな〗
『そうだな』
〖来ましたね〗
『ええ。お客様ですね』
『ほっほぉ~大人数だな』
『そうですね』
鍛治神ヴァル様、神虎牙王、医神エル様、バートさん。そして神獣様たち。
さあああっ
〖おや、貴女がいらしたのですね〗
〖てっきり魔神か武神あたりが来るかと思ってたぜ〗
『そうですね。一番以外な方がいらっしゃいましたね』
〖〖『天界樹の精』〗〗
『ふふ⋯⋯』にっこり
そう。ちびっこたちを早く寝かせた理由⋯⋯メインはこちら。ちびっこたちが眠り静かになった邸に現れたのは
『当たり前であろ?遅い時間にお邪魔するのえ?騒がしい武神様におまかせするなど、想像するに恐ろしい⋯⋯』ふぅ
優雅に扇で口元を隠しながら話す天界樹の精様。
『ふふ、良い判断ですね。武神様がいらしたら、せっかく眠ったサーヤたちを起こしかね⋯⋯いえ、確実に起こしてしまいますね』
『そうであろ?さすがバートじゃ。それ故に妾が来たのじゃよ』
〖天界樹なら冷静に動けますからね〗
〖シアも来たんだな!〗
〖はい。念の為のストッパー役です〗にこっ
『妾は必要ないと申すに⋯⋯』ふぅ⋯⋯
そう。天界からのお客様、この聖域に初めて起こしになった天界樹の精様。お久しぶりのシア様。そしてなぜこのお二人が降臨されたのかというと
〖それから、よく来たな!お前たち〗ニカッ
〖ご家族でいらしたのですね〗
『さあさあ、そんなところで膝をついてないでこちらにお座り下さい』にっこり
『は、はい。ありがとうございます』
『きょ、恐縮でございます』
『『し、失礼しましゅっ』』
〖噛んだな〗
〖噛みましたねぇ〗
『ふふ、そんな緊張なさらずに。さあ、どうぞ』
『『は、はひっ』』
『それでは、失礼して』
『ありがとうございます』
緊張しまくりのエルフの親子。特に巫女姉妹はさっきから変な声がでています。そう、イル様たちが悪いエルフとヤツの魔手から助け出したエルフさんたち。いよいよ
『サーヤに名前を付けてもらいにいらしたのですね』
『『『『はい。よろしくお願い致します』』』』
『妾は付き添いじゃ』
〖なら、私はお目付け役でしょうか?役得ですが〗くすくす
いよいよ!名付けの時!
でも、シア様はなんで天界樹様のお目付け役?必要ないような?
ガチャっ
ちびっこたちを寝かしつけて、おばあちゃんとおいちゃんも戻って来ました。
『お?来たのか?久しぶりだな。天界樹様。それにシア様も元気そうだな』
『ええ。元気ですよ』
『おお、ゲン!息災かや?久しいのぉ。ほんに、若返りおって。天界で会うた時とは別人じゃのぉ』
『あははは!あの時でさえ驚いたのにな!まあ、若い分にはいいよな!サーヤのおかげだな』
『そうじゃのぉ』ふふ
久しぶりの再会を喜ぶおいちゃんたち。おいちゃん聖域に来る前に天界で色々やらかしてるから⋯⋯
『人聞き悪ぃな!俺は何もやってないぞ!』
『⋯⋯誰に向かって言うておるのかは分からぬが、じゅうぶんやらかしておったと思うがの?まぁ、妾は比較的影響は少なかったがの。ほほほ』
〖違ぇねぇな!ガハハハ!〗
〖はい。何しろ私の師匠ですしね〗
『うぐぅっ』
ヴァル様やエル様にまで言われてます。おいちゃん、どんだけやらかしたの?
〖ふふふ、して、其方が
⋯⋯ 凛じゃの。妾は天界樹の精じゃ〗
天界樹様の目は、可愛らしい真っ白なくまの編みぐるみに向かいます。
『あらあらまあまあ、初めましてでよろしいのかしら?サーヤの祖母の凛でございます。天界では私の本体が大変お世話になっているようで、ありがとうございます』
『いやいや。世話になっておるのは妾の方じゃ。それに、其方の知識は素晴らしい故、いつも楽しくさせて頂いておるのじゃ』
『あらあらまあまあ、それなら良かったわ』にこにこ
にこにことするおばあちゃんに対し、天界樹の精様の目は複雑に揺れていた。
『天界の凛には伝えたのじゃが、改めて礼を申すのじゃ。愛し子を守って下さり感謝するのじゃ。そして、其方にも辛い思いをさせてしまって申し訳なかったのじゃ』
くまの編みぐるみのおばあちゃんに視線を合わせるように膝をつき頭を下げる天界樹様⋯⋯
『あらあらまあまあ、よしてくださいな。私は今、サーヤのそばにいられて幸せなのですから。それも神様たちが色々と助けてくださったおかげですもの』にこ
『そうか⋯そう言ってもらえると妾も救われる気分じゃ』ふっ
おばあちゃんの言葉で天界樹様にもやっと本当の笑顔が戻って来た。
『しかしじゃ』
『え?』ひょいっ
『ほんにクマなのじゃのぉ』くるくるぺたぺたわしわし
『あらあらまあまあ?目が回るわ?』くるんくるん
天界樹様、ひょいっとおばあちゃんを抱き上げてお腹から背中からかわいい丸いしっぽがついたおしりまで、くるくる回しながら触りながら確認。おばあちゃんはされるがまま⋯⋯
〖お?怖いもの知らずだな天界樹。仕返しか?〗にやにや
〖いつも天界の凛に振り回されてますからね〗
〖おや、シアも中々言いますね〗
神様たちは止めるでもなく見守ってます。
『ふむ、こちらの凛は随分と可愛らしいのぉ』むぎゅ
『あらあらまあまあ?お気に召していただいて何よりですわ』
『うむ。妾にも作ってもらいたい位じゃ。編みぐるみというのじゃったか?』むぎゅむぎゅ
『あらあらまあまあ、お作りしますわよ?どんな子がいいかしら?お好きなお色は?』
『そうじゃのぉ⋯⋯』むぎゅむぎゅ
すっかり意気投合?もう仲良し!
〖天界樹、凛さん、その続きは後にしていただいて、そろそろこちらに戻ってきてもらっていいかしら?〗
『おや』
『あらあらまあまあ』
『すまぬのじゃ、ついの』
『ついね』
〖まあ、すっかり打ち解けたようで良かったわ〗
シア様、若干苦笑い。
〖しかしよ?よく来られたな?天界樹。天界の凛に引き止められなかったのか?〗
ヴァル様が聞くと
〖あ、あはは⋯⋯〗
『それはのぉ⋯⋯』
〖『大変』〗
『じゃったのぉ』
〖だったわねぇ。天界樹ったら、凛に腰にしがみつかれて、文字通り引きずって歩いて、みんなが必死に引き離したのよね〗
『まあ、妾も凛がサーヤに会える時まで一緒に我慢してやると言うておったからのぉ。悪いことをしてしまった自覚はあるのじゃが⋯⋯』
『ひどいわ!天界樹様!約束したじゃない~っ』ずるずるずる
『離すのじゃ!仕方なかろう!このような時間に騒がしい武神様を行かせられるわけがなかろう!』
〖どういう意味だよ!〗
〖武神ちゃんじゃ、サーヤたち起こしちゃうでしょ~〗
『工芸神様だっていいじゃないの~っ』ずるずるずる
〖そうですね。喜んで行きますよ〗
『工芸神様はやらねばならぬことがあるであろ!』
〖チッ〗
〖工芸神ちゃん、舌打ちしないで~〗
『凛、俺が付き合ってやるから我慢しろ。俺だって行きたいんだ』ぐすっ
〖料理長、泣かないでよ~〗
『いやーっ!ずるいわ~っ』うわぁんっ
〖じゃあ私が行ってあ・げ・る♪〗
〖魔神ちゃんは僕のそばにいて!?あっそれなら僕も行けばいいんだ!〗
『主神様!?しっかり止めてくだされ!』
『うわぁんっ天界樹様、ずるい~っ』ずるずるずる
『⋯大変じゃったの』ほろり
〖ええ、大変だったわね〗うるる
遠い目をしたお二人の目に光るものが⋯⋯
『あ、あらあらまあまあ?何だかごめんなさいね?』
とりあえず謝るこちらの凛さん。
〖ほらほら、そろそろ本当にこちらにいらして下さい〗にこ
『お客様がお待ちですよ』にこ
『『〖はいっ〗』』ビシッ
ヴァル様、バートさんコンビの笑顔が炸裂!
『まあ、茶と菓子でもつまんでくつろいでくれ。おれはゲンだ。よろしくな』
できる男おいちゃん!まわりがこんなでもしっかりおもてなし!
『ありがとうございます。そうですか、あなたが噂のゲンさんなのですね』
『噂?どうせろくでもないこと言われてるんだろ?』ふんっ
『いえいえ!皆様、褒めたたえておられましたよ』
『へ?まさかだろ?わははは』
『いえいえ、本当ですよ』
『またまた』
『いえいえ』
何だかこちらも打ち解けた?
『えっと、こちらはホットミルクにはちみつをたらしものです』
『落ち着きますよ』
『春陽です』
『山桜桃です』
『同じ歳ぐらいですよね?』
『よろしくお願いします』
『『は、はい。よろしくお願いします』』
『ありがとう。娘たちも少し落ち着いたみたいだわ。これからよろしくお願いしますね』
『『はいっ』』
こちらもいい感じ?
『それで、なんでシア様がお目付け役なんだ?言っちゃあなんだが、ほかの神様ならともかく、天界樹様には必要ないんじゃないか?』
『ん?妾もそう申したのじゃが、妾が来たもうひとつの理由がのぉ』
〖お父様とお母様からもそちらが心配だからついて行けと言われまして⋯⋯まあ、私も心配でしたし〗
『『もうひとつの理由?』』
みんなが首を捻っていると
『そうじゃ。さっきから部屋の隅でコソコソしている、そこな粗忽者のことじゃ』ギランッ
『『ヒッ!』』
『あらあらまあまあ』
『目が光ったな⋯⋯』
山桜桃と春陽は思わず手を取って震え上がり、おばあちゃんとおいちゃんは少々同情のこもった目を天界樹様が睨みつけた部屋の隅に⋯⋯
『『お母様⋯⋯』』
『だから言いましたでしょう?』
『隠れても無駄ですと⋯⋯』
『神妙にお縄につくにゃ』
『しーっ!私はいないわぁ』
『『『ええぇ⋯⋯』』』
『誰が⋯⋯いないと言うのじゃ?』ゴゴゴゴ
『えぇ?そりゃあ私⋯⋯』たらぁ
〖ほぉ⋯⋯いないものの声が妾には聞こえるのじゃがのぉ。声どころか姿も見えるのじゃが、おかしいのは妾なのか、お主なのか⋯⋯のお?精霊樹の精、いや、今は結葉じゃったのぉ?〗
ぎぎぎぎ
『あ、あらぁ、天界樹の精様ぁ、お久しぶりぃ。ご機嫌麗しゅう?おほほ』
『久しいのぉ。息災で何よりじゃ。じゃが、機嫌は麗しくはないのぉ⋯⋯』ごごごご
『あ、あらぁ?それは何故かしらぁ?』
『其方のやらかしが過ぎるからじゃろうがあっ!この戯けがぁ!』
ピシャーンっ
『いやぁ~ん、許してお姉様ぁ~』
『なぁにが『いやぁん』じゃあ!逃げるでないわ!』ぐるぐるピシャーンっ
『いやぁ~んっ』
どこからか生やした弦でぐるぐる巻き!部屋の中なのに他を全く傷つけずに結葉様に電撃を食らわしている。
『『うわぁ⋯⋯』』
『あの結葉様が』
『やられ放題?』
呆然とする山桜桃、春陽、それからフゥとクゥ。
〖そりゃそうだろ〗
〖ある意味、結葉が一番頭が上がらない人物ですからね〗
『それもあっての人選だったのでしょうね』
〖結葉は天界樹が落とした種から生まれましたからね。お姉様と呼ばせていますが、母親のようなものですからね〗
神様たち、うんうん頷きながら見守ってます。
『あらあらまあまあ⋯⋯』
『なるほどなぁ』
『頼もしい方がいらしてくれて良かったじゃねぇか』
『ほんとだねぇ。しっかり矯正してくれたらいいけどねぇ』
親方やおかみさんが期待を込めて応援している。が、
きゅるる『それは難しいと思う』
『ああ、まあ』
『そうだねぇ』
『『『『『あの結葉さまだからな(ね)』』』』』
うんうん。みんな納得。
『天界樹の精様、素晴らしいですわ』だばー
『あのお母様が小さくなってますわ』だばー
『奇跡にゃ!』
それでもアイナ様、リノ様、ニャーニャは感動しきり。両手を組んで拝んでます。滂沱のごとく涙を流して⋯⋯
『少しは反省せぬかぁ!』
『ええ~私、ちゃんとやってるのにぃ』
『どこがじゃあ!』ピシャーンっ
〖うんうん。ちゃんと遮音も衝撃もこの部屋と結葉周辺にかけてるし〗
〖サーヤに会いに行きたいのも眠りを妨げないように朝まで我慢すると言ってましたしね〗
『やはり、武神様や魔神様ではなくて正解でしたね』
〖〖正に英断〗〗
〖だな〗ずずっ
〖ですね。シア、よくやりました〗ずずっ
〖ありがとうございます。あら、これ新作?おいしいわ〗さくさく
『さあさあ、皆さん、せっかくのお茶が覚めてしまいますよ』にこにこ
『『あ、あはは』』
『『さすが神様方⋯⋯』』
『茶飲みながら余裕だな』
『あらあらまあまあ、シア様、こっちも新作よ』
〖あら♪嬉しい♪〗
慣れっこの皆さんは逞しい。
『あ、あの、これが日常なのでしょうか?』
『皆様、達観されているような』
きゅるる『そう。毎日賑やか。楽しい』
『まあ、退屈することはないよな』
『そうだね。まあ、慣れだよ慣れ』
『『は、はあ。そうなのですね』』
エルフの夫婦はまだまだ慣れないようですが
ぷるるん『『これもおいしい。食べて』』
『わあ、スライムさんまで!』
『いただきます』
エルフ姉妹は慣れてきたみたいです。
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