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3-2 わたしの死因は格差⁉

 折笠さんのバースデー当日。姫川さんは倒れこんでしまった。
 折笠さんがいうには学生カップルのイチャイチャを目撃したのが原因だという。

「それじゃあ、中学で失恋したのが原因で女子校を選んだのですか?」
「うん。ついカッとなって。目の前が真っ赤になって、気が付いたら女子校に入学していた」

「やば……。殺人犯みたいな理由ですね」
 姫川さんを信奉している村雨さんも引いている。

「そんな理由で志望校選んじゃだめですよ」
「うん。いま思えばね。それで学生カップルを見ると羨ましくて発作が起こるの」

 姫川さんは中学三年生のとき片思いした男子に振られたショックで女子校を選び、まだ立ち直っていないという。それで学生カップルを目撃すると『発作』が起こるのだ。

 ばかみたいな症状だが深刻である。学生カップルを目撃すると発作が起こるのなら日常がままならない。

 でも姫川さんに弱点があったことを知ってわたしは嬉しかった。姫川さんって完璧な人間だと思っていたから。


 折笠さんに先導されてわたしたちは彼女のマンションに向かった。
「ここがわたしの家」

 彼女が立ち止まったところはタワーマンションまえ。
 見上げても屋上がどこにあるかわからない。
 わたしは三階建てアパートの1DKに住んでいるのに!

「格差―‼」
 わたしはまた泡を吹きそうになった。

「こんどは鳴海さんの発作が……」
「どうなってるのかしら。うちの天文部は」

 みんなに引きずられながら建物に入った。入り口で折笠さんがパスコードを入れる。
 建物への入室にパスが必要なんてわたしは映画でしか観たことがない。しかも入り口付近に警備員常駐であった。

 エレベーターに乗って上階へ。エレベーターは最上階の40階で止まった。一同エレベーターを降りた。

「このフロアは全部わたしの家になってるから」
「格差―‼」
 意識を取り戻したわたしがまた泡を吹きそうになる。立っていられなくて地面に横になった。

「わたしが死んだら死因は『格差』と書いてください」
 わたしは目を閉じた。

「死なないで! ちーちゃん! やだー!」
 姫川さんはわたしの体に覆いかぶさって号泣した。

「こんなに早くお別れがくるなんて……」
 村雨さんの反応はジョークではなく本気だろう。

「死ぬわけないだろ。いつまで続けるの。この小芝居を」
 折笠さんは学校では礼儀正しいがプライベートでは毒舌らしい。

つづく

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