9:00 P.M.
桜との通話を終えた僕は、カーテンを少し開けて窓の外を見てみた。
空は良く晴れていて星がちらほら見える。
天文部に所属している僕は、同じく天文部に所属している
すぐにオリオン座を見つけた。
しばらくぼんやりとそれを眺め、カーテンを閉めた。
やっぱり星は実家の方が良く見えるな、と僕は思った。
僕や天姉やけいの実家であるあの家は山奥にあった。
周りに何の明かりもないため、満天の星空を当たり前に見ることができていたのだ。
引っ越してきてからあの光景が特別なものであったということを改めて実感した。
ホームシックという程のことでもないが、僕はあの家のことを考え始めた。
僕たち家族が七人で過ごしていたあの家には、今はもう四人しかいない。
僕たち三人がいなくなった分だけ寂しくなったあの家の様子を想像して、少しだけ感傷的な気分になった。
僕は再び星座の本に目を落とした。
そしてこの本を貸してくれた子のことを思った。
天艶は面白い子だ。
思考回路が面白い。
頭は結構良いほうなのだが、多分結論を出す時にだけIQが下がっている。
出会ったばかりの時にした会話で、天艶は僕とけいのことについてかなり核心に迫る推理を披露してくれたのだが、彼女が出した結論は僕たちが忍者であるということだった。
それまでの推理が全部無かったことだったかのように、けいのゴザル口調を根拠として僕たちの正体が忍者であると結論付けたのだ。
僕は天艶のこの「終わり良ければすべて良し」ならぬ「終わり良くないすべて台無し」な推理が結構好きだ。
推理を披露してくれた時の天艶の真剣な表情を思い出して、僕はクスッと笑った。