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9.リルとの出会い、威厳のないフェンリル父 

『リル、今日は何が食べたい?』

『えっとぉ、今日はタートル肉団子とツノサイのステーキ!!』

『分かった。他には?』

『うんとねぇ、パンケーキ!! 果物いっぱいが良い!!』

『よし、いっぱいで頼もうな』

『やったぁ!! スッケーパパは石いっぱい?』

『ああ、そうだ。石いっぱいだ』

 リルに何を食べたいか聞きながら食堂へ向かう俺達。俺達が今向かっている食堂は、この施設の中で1番大きな大食堂だ。

 勿論施設には大食堂だけじゃなく、ちょっと良い料理を食べることができたり、地球みたいに、ラーメンとか揚げ物とか焼肉屋とか、専門的な飲食店を複数用意してあるし。大人が楽しめるように、お酒を飲むお店も用意してある。

 だけどこの大食堂にくれば、ファミリーレストランみたいに何でも揃っているので、俺とリルはよく大食堂へ来て食べるんだ。

 そうそうリルのことだけど。俺のことをパパと言っているが、勿論俺の子供じゃない。フェーンという名のフェンリルがいるんだが、そのフェーンの子供だ。

 リルとの出会いは約3年前、俺のマッサージ師としての修行が終わる少し前のこと。その時フェーンが奥さんのホワイトウルフ、名はフフリと。まだ小さかった、1歳になったばかりのリルを連れて、師匠のマッサージを受けにきて。それがリルとの初めての出会いだった。

 フェーン達が師匠にマッサージを受けている間、俺はリルの相手をする事に。魔獣がマッサージ? なんて思うかもしれないけど。師匠のマッサージは魔獣にも大人気で、よくお店に魔獣が来ているんだよ。勿論その魔獣達も、マッサージの後は幸せな顔をして帰って行ったぞ。

 その日のフェーンは、肩と腕を痛めたとかで、自分の回復魔法で、肩の痛みを治したが。どうにも違和感が消えないって事で、マッサージを受けに来て。奥さんのフフリは、旦那の面倒を見ていて疲れたからと、マッサージを受けていた。

 フェーンが何で肩と腕を痛めたか。それは何とも言えない理由だった。
 その日の午前中、森の中で食料を探していると、ある魔獣が目の前に現れたと。その魔獣とは、ミートフロッグという名の魔獣で。簡単に言えばカエルに似ていて、だけど大きさは大型犬と同じくらい。食べる事のできるカエルで、その質感は牛肉に似ている、食用魔獣だ。

 ただ、目の前に現れたミートフロッグは、まだ若かったらしく、大きさが平均の半分くらいだったらしい。だけどリルのはちょうど良いだろうって事で。フェーンはそのミートフロッグを狩る事に。

 だがそのミートフロッグ。なかなかの動きをするミートフロッグだったようで。もともとかなり素早く、動くことができるミートフロッグなんだけど。そのミートフロッグは、平均の倍は早く動いていたって。

 と、そうは言っても、フェンリルのフェーンにかかれば、何の問題もないと。舐めてかかっていたフェーン。見事ミートフロッグの動きと策にはまり、思い切りずっこけたと。そのせいで肩と腕を痛めたらしい。

 カエルにやられるフェンリル……。結局そのミートフロッグには逃げられ、フェーンが肩と腕の治療をしているうちに、フフリが別のミートフロッグを仕留めた。

 そんな、フェンリルとしても父親としても、威厳もなにもないと、怒っているフフリの話しを聞きながら、リルと遊んでいた俺。始めてスケルトンと遊んだせいか、リルは俺に興味深々で、そしてすぐに懐いてくれて。俺の肋骨をを投げてやるととても喜んでいた。

 そうして遊びがひと段落つくと、リルが俺に、俺はミートフロッグを倒せるかと聞いてきて。倒せると言ったら、何故かその姿を見てみたいと言われてしまい。数日後みんなでミートフロッグを狩に行ったんだ。

 そして狩に行った場所で、フェーンと俺、そちらが早く3匹のミートフロッグを狩れるか競争する事になり。結果は俺の勝利に。何でだろう? なぜかその時もフェーンは、ミートフロッグにバカにされていた。

 リルは勝った俺に大興奮。それからは更に俺に懐いてくれて。いつの間にか俺の事を。スッケーパパと呼ぶようになったんだ。

 ところが1年前。フフリの家族が属している、フェーンの群ではなく、別のホワイトウルフの群れが住んでいる森が、人間達の攻撃を受けているという情報が入り。
 フェーンとフフリ、そしてフェーンは率いている群全員で、フフリの家族や群れを助けに行く事に。
 
 だけど体が少し大きくなったものの、まだそんなに力がないルリを、連れて行くのは危ないって話しになって。ならこの街で1番懐いている俺に、リルを任せたいとお願いされ。それから2人で暮らしているんだ。

 あれから1年、そろそろ帰ってくる頃だと思うけど、フェーン達が帰ってくるまで、しっかりとリルを守らなくちゃいけない。そして守るだけじゃなくて、大きく育つように、たくさんご飯を食べさせてあげないと。

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