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最終話

健太は毎日、倉庫でのアルバイトを終えた後、自分の机に向かって問題集に取り組んでいた。時には遅くまで勉強を続け、疲れ果てながらも「東大合格」の文字が脳裏に焼き付いていた。

ある日の夜、倉庫の中で健太はふと息抜きをしようと、机から目を離し、倉庫の端っこに置いてあるおもちゃのぬいぐるみを見つけた。それは大きな犬のぬいぐるみで、どこかで見たような気がした。

「なんや、このぬいぐるみ。なんか懐かしい感じがするで。」

ふとした好奇心から、健太はそのぬいぐるみを手に取り、よく見ると「ダイソー」のタグがついていた。

「あー、ダイソーのやつや。店内でよく見るけど、ここにあるってことは、なんか理由があるんかな?」

健太は不思議に思いながら、ぬいぐるみを机の上に置いた。そして、再び問題集に集中し始めた。しかし、その夜から、ぬいぐるみが健太の気になる存在となった。

翌日、健太はまた倉庫で働きながら、ぬいぐるみのことが頭から離れなかった。そして、閉店後、再び机に向かって勉強を始めた健太は、ふとぬいぐるみを見つめていた。

「おい、お前、なんや?なんか話しかけたるか?」

ぬいぐるみは黙って健太を見つめていたが、その瞳には何かが秘められているように思えた。

「まあ、なんでもないか。んなことより、数学の問題集やで。集中せなあかんな。」

健太はそう言いながらも、ぬいぐるみに思いを馳せた。その夜、彼はぬいぐるみを抱きしめて眠りについた。

次の日、健太は学校から帰ってくるとすぐに倉庫に向かい、ぬいぐるみを見つめた。

「おい、お前、なんでこんなところにおるんや?」

すると、ぬいぐるみは健太に対して何かを伝えたいように見えた。

健太はぬいぐるみを見つめながら、その日も一生懸命に勉強に取り組んだ。時には苦しい問題にぶつかり、挫けそうになることもあったが、ぬいぐるみが彼を見守るようにしている気がした。

「もう少しや。もう少し頑張るで。」

そして、試験まで残りわずかになったある日、健太は倉庫でぬいぐるみを見つけた。その時、ぬいぐるみが特別な意味を持っていることに気づいたのだ。

「お前、なんでここにおんねん?」

すると、ぬいぐるみは健太に目を向け、微笑んだように見えた。

「なんや、笑ってんのか?」

その瞬間、健太の中で何かが変わった。彼は自分の力で夢を掴む覚悟を決めたのだ。

試験当日、健太はぬいぐるみを胸に抱き、自信を持って問題に取り組んだ。そして、結果発表の日、彼の家には東大からの封筒が届いた。

「ええっと、開けるで。」

ゆっくりと封筒を開けると、そこには健太の願いが叶ったという言葉が書かれていた。

「やったー!合格したでー!」

健太は家族と一緒に喜びを分かち合い、そしてぬいぐるみに感謝した。それから、彼は倉庫での日々を振り返り、ぬいぐるみが自分の励みになったことを思い出した。

「おおきに、ぬいぐるみ。おかげやで。」

そして、健太は東京大学への新しい道のりを歩み始めたのだった。

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