第一章
月の光がない新月の夜だった。
高校生になった白星雪音は一人いつもの帰り道を静かに歩いていた、別に変わりなく、何もなく、 ただ一匹の黒猫が住み着いているだけの静かな、ひっそりとした路地裏だった
なのに、その人だけは二人の声とヒールの音が路地裏に響いていた
「あら、無表情な顔してどうしたのかしら?まだ若いのに何か悩み事?」
若いと言っても20歳に達しているか怪しい女の人がコツコツとヒールを鳴らして歩いてきた。
「...誰ですか」
「BARとFortune teller、占い屋を経営しているスピカよ、よろしくね」
「よろしくすることはないと思いますが、私は雪音です。」
絶対スピカなんて偽名に決まってるじゃん
「貴方、良かったら私の占い受けてみない?」
占い...
「大丈夫です。そう言うの興味ないので」
そう言い私は止めていた足を動かし始める
だが、まだヒールを鳴らしている音が私の後ろで聞こえる
「...良い加減にしてください、ついてこないで」
占いなんて...
「警察、呼びますよ」
「あら、警察は勘弁ね、警察を呼ばれるのだったら、私は帰るわ。でも、絶対に貴方は私の店に来 る、星の導きは裏切らないわ。」
「星の導きなんてわからないのに...」 「私はわかるのよ、それじゃぁね、雪音さん。」
また彼女、スピカはヒールを鳴らして帰っていった
「...わかるわけないじゃん」
だって、私の愛した、亡くなった琉騎もそう言って...
「俺には星の導きがわかんだよ!な、雪音も俺の占い信じてみ?」
その時だって
「俺と雪音は一緒に人生を歩むだってよ!俺ら結婚すんじゃね?」
とか言ってたくせに、結局は
「琉騎さんが交通事故のため亡くなりました」
結局は私を残して死んじゃったじゃん
「なんで今回もそうなの?」
星の導きなんて分かんないくせに、そんなのないくせに
「どうして、どうしてみんなそうなの?」
星の導きなんて言葉、もう聞きたくないよ
雪斗も時斗も蘭も葵も天斗も司も蓮斗も琉騎も流河も湊も奏も春友も勇友だって、「星の導き」とか 言って死んじゃったじゃん
「...私は、どうすれば良いのよ!」
もう、できることなら、いっそのこと死にたい、死にたいのに、私はみんなと約束したから死なない
その約束が今になって私を苦しめる
「もう、誰かを失いたくないの...」
家に帰ったって一人、家族なんてみんな死んでいった、親戚もおばあちゃんだけだし、おばあちゃんもいつ亡くなるか分かんない
「こんな人生、嫌だよ」
胸元にある、ロケットペンダントを開ければ、大切だった、今も大切な家族とみんなとの写真 ...私が生きている、生きるための希望
「みんなは今頃何してるのかな?」
答えてくれる人なんていないのに...
「愛してる、愛してたよ、みんな」
その言葉は暗闇に光る星に呑まれて消えていった。