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第七話 ミアと魔王


 今日は、私のお披露目があると言われた。
 魔王島の中央にある私のダンジョンに皆が集まってくる。

「お姉ちゃん」

 私の横にはミイがいる。肩には子狐がいる。
 それが嬉しい。私たちは、魔王様に救われた。いつ死んでもおかしくなかった。でも、魔王様に保護されてから、私たちの生活は変わった。

 魔王様が、幾多の魔王を束ねる大魔王様になった。
 魔王様は、私だけではなく、妹にも言葉遣いは自由にしてよいと言われている。甘えるのとは違うが、大魔王様の考えは、魔王は同列で力の違いはあるが、魔王は同列だと言って・・・。魔王の眷属も、言葉遣いを咎めない。

 そう、私は魔王になった。

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 魔王様が大魔王様となった後で、私とキアとロアとシアとベアとマアとラアが呼び出された。ヒアは、呼び出されなかったから不思議だった。獣人系の人物だけが呼び出された。

 そして、私たちが、魔王になれると教えられた。
 魔王になるメリットとデメリットも教えてもらった。

 すぐに結論は出す必要はないと言われたが、大魔王様のお力でも3名までしか魔王に引き上げられないらしい。時間がたてばまた引き上げられるようにはなるようだけど、1?2年くらいは時間が必要なようだ。

 メリットは、ダンジョンが持てるようになることです。眷属も作ることができる。
 デメリットは、大魔王様が討伐されると一緒に死んでしまうことです。

 メリットでもデメリットでもあると言われたのが、寿命がなくなることで、子孫を残すことができなくなることだ。
 魔王の因子を持っているのが、呼ばれた者たちで、他は因子を持っていないと教えられた。

 ヒアは、人族であることや、大魔王様への忠誠は高いが、一番の関心が別方向に向かっているために、因子が芽生えていないようだ。愚かだ。大魔王様以上に大切な存在などいない。

 寿命が無くなる?それだけ長く大魔王様のお役に立てる。ルブラン殿やモミジ殿たちと一緒の存在になる?私には、メリットでしかない。

 心配事が全くないわけではない。
 大魔王様の次にだいじなミイの存在だ。かわいい妹だ。大魔王様に保護された時には、明日には死んでしまうかもしれないと思っていたが、しっかりした食事と適度な運動で、逞しくなった。身長も私と同じくらいになった。ミイには因子が芽生えなかった。
 心配だけど、それ以上に大魔王様のお役に・・・。私たちの誰かが魔王になって、魔王たちが集まる場所の管理をしてほしいと言われた。

 皆が少しだけ戸惑っている。
 気持ちはわかる。わかるけど、私は迷わない。

「大魔王様。私は、魔王になりたいです。私ではダメですか?」

「ミア。いいのか?子孫を残せないぞ?」

「はい。幸いな事に、魔王カミドネが保護してくれた所に、お父様の弟様が居ました。狐人族としては、お父様の後は、弟様が継いでくれます」

「そうか?もう一度、確認するが、本当にいいのか?俺が討伐されると、ミアも一緒に死んでしまうぞ?」

「はい!それこそ、私が望んでいることです。攻めてくるような者が居れば、剣にも盾にも、大魔王様のために命を使います」

「わかった。魔王島のダンジョンは、ミアに任せる。他の者は下がってくれ、持ち帰って相談してきてくれてもいい」

 皆が一斉に玉座から出ていく.残ったのは、私と大魔王様だけだ。
 ルブラン殿も、モミジ殿も、ナツメ殿も、カエデ殿も、カンウ殿も、バチョウ殿も、皆とは違う扉から出て行った。

「え?」

 二人だけになったことに驚いていると、大魔王様は笑ってくれた。

「大丈夫だ。ミア。本当に良いのだな?」

「はい」

「わかった。ミア。ふむ・・・。ミアは、真命ではないのだな」

「え?」

「あぁ皆の名前は、俺が決めたのだったな。そうか、あれは真命にはならないのだな。真命が空白のままだと、コアが生成できないのか?皆に出て行ってもらって正解だな」

 大魔王様が、私の頭に触れながら何か難しい表情で呟いていらっしゃる。

「大魔王様?」

「すまん。ミア。ミアたちは、名前がなかったのだよな?」

「・・・。はい」

「俺が決めていいか?」

「え?ミアという名をもらいましたが?」

「うーん。説明が難しいけど、ミアと言うのは、誰もが知っている呼び名だ。そうだ!ルブランがいい例だ。ルブランは、皆が呼んでいる名だが、ルブランには俺とルブランしか知らない名がある。それが、真命だ」

「そうなのですか?それでは、他の方々も?」

「そうだ。モミジたちにも、真命はある。もちろん、他の魔王たちも同じだ」

「そうなのですね」

「そうだ。真命を知られると、名で縛られてしまう」

「わかりました。大魔王様と私だけが知っているのは、真命なのですね。ミアは、皆が知っている名なのですね」

「そうだ」

「お願いします。大魔王様。私に真命をいただけますか?」

「わかった」

 大魔王様に、真命をいただいた。
 ”漢字”で書かれた名前だ。

「よし、真命が入った。ミア。魔王化に移行するぞ」

「はい。お願いします」

 真命をいただいた時点で、大魔王様との繋がりを強く感じるようになった。ルブラン殿たちは、こんなにも大魔王様を身近に感じていたのかと考えると、嫉妬してしまいそうだ。

 大魔王様が、本の様な物に手をおいて、何か発動した。

 くっ!
 何か、力が入り込んでくる。

 体を力が駆け巡る。

 大魔王様の前で無様な姿を見せたくない。

 数秒の様な、数分の様な、不思議な時間が過ぎ去った。

「ミア。頑張ったな」

 私は倒れてしまっていたようだ。
 大魔王様が私の頭を撫でてくれている。

 嬉しいけど、申し訳ない気持ちが強く出ている。そして、ふがいない自分が許せない。

 立ち上がろうとしても、足に力が入らない。

「動かなくていい。まだ、体の再構築が終わったばかりだ」

「・・・」

 返事をしたいが声が出ない。

「わかっている」

 大魔王様が優しく頭を撫でてくれる。

 どのくらい時間がたったのかわからないが、声が出るようになって、大魔王様に謝罪した。笑って許してくれた。

 立ち上がって驚いた。
 普段よりも視線が高い。手足を見れば、成長している?胸は成長していない。

「ほぉ・・・。九尾か」

「え?」

 尻尾を見れば、確かに根本から9本の尻尾が生えている。
 狐人の伝説上の存在だ。私が?本当に?

 ”何か”が目の前を漂っている。
 大魔王様には見えていないようだ。

 魔王化に伴う”何か”なのかもしれない。

 ”何か”に手を伸ばす。
 確かに触れているが、触れていない。”何か”が、突然、動き出した。

「え?」

 徐々に形になっていく、これは?
 大魔王様も驚いているが、何か面白そうだ。

 私から何かを吸っているように思える。

 5分くらいたったころに、”何か”がはっきりとしてきた。

「子狐?」

「ほぉ・・・。面白いな」

「大魔王様?」

「ミアのコアだな。自立するのか?すごいな」

「え?え?」

 コア?
 魔王が持つというコア?子狐が?

『マスター』

「え?誰?」

「ほぉ。動くだけではなく、自分から話しかけて来るのか?興味深いな」

 子狐に名前を付ける必要があると子狐が話しかけてきた。名前は、大魔王様が考えてくれた。真命と呼び名を別に考えてもらった。大魔王様も子狐に・・・。小狐丸に興味があるようで、二人でいろいろ小狐丸に質問をした。

 どうやら、大魔王様や魔王たちの様に、異世界から召喚された魔王ではなく、私のような者が魔王に進化した場合には、種族に関連があるサポートがコアになるようです。
 だから、人族のヒアには因子が芽生えなかった可能性があると、大魔王様が考えを変えられていた。

 魔王島の支配も小狐丸が行えると言うので、ダンジョンの作成を指示した。
 5日ほど必要だと言われた。

 そのあとで、居住区やダンジョンに階層や罠を作った。
 眷属はまだ作っていない。大魔王様からいただいたポイントで眷属を召喚するのは、小狐丸から辞めた方がよいと言われたからだ。

 そして、同じ種族の者・・・。私なら、狐人族ですが、眷属にすることができるようだ。条件はあるようだが、今のところミイだけだけど、眷属に出来ると教えられた。

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