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究極の生贄こと
他のキャラとは違い、知り合ってから
そのため苦痛にはならず、むしろ落とせた時に得られる幸福のスパイスになると美点と言えよう。
彼女の固有スキル、『
この固有スキルは回復に特化したスキルなのだが、その効果は他ゲーの同系統スキルと比べて少し変わっている。
その効果は
『自身に最大HPの10%ダメージ。指定した味方単体の最大HPの70%回復』
『1ターン毎に自身の最大HPの5%自然回復』
である。
珍しいのは回復量が尋常ではない事や、HP自然回復がある事ではない。回復スキルであるのに、自傷ダメージがある事だ。
俺が今まで経験した中での話だが、デメリットのある回復スキルはそこまで珍しくないと思う。しかし、
だが、ゲームに人生を捧げた俺達
大抵、この手の珍しいスキルはストーリーでキャラが持ってる珍しい力を戦闘システム用に無理矢理落とし込んだ場合が多い。
そうして俺の目論見通り、ストーリーを進めて行く内に来紅の固有スキルが、なぜ自傷ダメージがあるのか判明した。
してしまったのだ。
彼女の固有スキルの効果は現実となった今、こう書き換えられているだろう。
『貴女の血肉を
『十秒毎に最大HPの五%自然回復』
こんな風に。
分かるだろうか。この、
つまり、彼女はゲーム内で味方を回復するとき、自分の体を食わせていたのだ。文字通りの意味で。
そして、彼女はゲーム内でポーションを作る事ができる。彼女にしか作れない特別な物で、効果も高い。ゲーム時代では金策にもなった。
ゲームで作ったそのポーションは紅かった。
そう、ちょうど
主な原料は言うまでもない。彼女の血液である。
ストーリーで彼女がステータス画面を見せてくれるシーンがあった時、初めてこの事実を知った俺は吐き気を抑えられなかった。
そして後悔した。
自身が初めてハッピーエンドを見せたいと思っていたキャラを、俺は知り合ってからずっと痛めつけていたと分かったからだ。
「あの、本当に大丈夫ですか?」
驚愕と考え事で固まっていた俺の事を、体調がよっぽど悪いと思って心配してくれたのだろう。
汚れるのも気にせず地面に膝を付いて目線を合わせ、話してくれた。
「ああ、悪い。こんな時間に誰かに会うと思ってなかったから驚いたんだ」
「なら、よかったです。私のポーションって色が他と違うので、実はそこを心配されてるのかもって思っちゃいました」
「そんなことない。ポーション助かるよ」
冗談めかして告げる彼女に、俺は本心から問題ないと伝える。
なにせ、効果はよく知っている。恐らく、現段階で彼女が作った総数よりも多く使ったのだ。疑う余地など有るはずもない。
「ふふっ。このポーションは露店市場に売りに行ってるので、気に入ったら来てください」
自身の救いたい相手が
「ありがとう、俺は綺堂薊だ。行かせてもらうよ」
ああ、彼女を見るほど強く願う。
前世では、願った数だけ彼女を
それでも諦めきれなかったのは、彼女達の幸福を見たかったから。
「待ってますね。未来のお得意様♪」
「ああ、約束だ」
約束するとも。
君を、君達を俺の
去って行く彼女の背中に誓う。
「さてと、」
先程の誓いを果たすにあたって初めに俺がするべきことは……
「飲むしかないよな、
だって、約束したし。
もしここで俺が
たとえ
「ゥ、ゴェッ……」
その後、俺はこの世界で初の病みイベントを乗り越えた。