223 街中での攻防戦④/ウテナの決意
フィオナは辺りを見渡した。
「ひどいことになってきたわね」
戦いで建物は所々破損してしまっている。
瓦礫やら、ひっくり帰ったイスやら、壊れてしまった皿の破片やらが、大通りに散乱している。
「復旧するのには、少し時間かかりそうね」
「あっ、あそこの服屋!」
フィオナの横で、ライラは心配そうに建物を指差した。
「大丈夫かしら……?」
「あら、欲しい服でもあったの?」
「そうなのよ。次の交易報酬で購入しようって思っ……」
フィオナとライラが話している間にも、いまだ、そこいらでワイルドグリフィンらとの戦いは続いていた。
やはり、最初に撃退に成功したのは、フェン達のキャラバンサロンだったようだ。
「おい、それより、ウテナは?」
オルハンが急かすように言った。
「あそこよ」
「あれか。おい!お前ら、加勢しにいくぞ!」
「ちょっと待って、オルハン」
「なんでだよ!」
言いつつも、改めてオルハンはウテナとワイルドグリフィンを見た。
「アイツら、なんで仕掛けてこないんだ?」
ウテナの位置は、先ほどから変わっていないようで、グリフィンもウテナの周りを、弧を描きながら歩いているのみ。攻撃する気配はなかった。
ウテナのほうも動かず、ナックルダスターを装着した右手をただ見つめていた。
「今回のグリフィンは完全に獰猛な野生種だが、もともと、グリフィンは頭のいい生き物なんだ」
オルハンの横で、フェンが言った。
「ちゃんと育成すれば、人間のパートナーや、強力な護衛にもなる」
「へぇ」
「おそらく、グリフィン達は、今のままではウテナに勝てないと思っているから、無理に仕掛けないんじゃないか?」
「……マジ?」
「たぶん」
と、ウテナがしゃがんだ。
「フィオナさんに、三体って自分で言ったからな~」
そう言い、ほどよいサイズの石を持つと、周りを取り囲んでいるのとは別の、護衛達と交戦しているグリフィンへと投げた。
――ゴツンッ!
後頭部へ直撃。
「ウテナのヤロォ、マジか……!」
「敵を増やしたね……」
案の定、頭に石を当てられたワイルドグリフィンは護衛達への攻撃を中止し、ウテナのほうへとゆっくり迫ってきた。
「……ルナ」
ウテナがまた、誰に言うという訳でなく、言った。
「大丈夫よ。あたしが、強くなるからね」
3体目が、先の2体の歩いているウテナを中心とした軌道に入る。
「強くなって、あたしが、あなたもフィオナさんも……守ってあげるから!」
と、ウテナの背後を通り過ぎかけた一体が、ウテナへと身体ごと向けた。
ウテナが素早く振り向く。
「来い!!」
その一体が飛び上がった。
――バサッ。
翼を羽ばたかせて、空中で一瞬止まったと思うと、ウテナ目がけて一直線に滑空してきた。