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呪われた祠。



 前も言ったが、鬼伝説は史実である。

 その中で登場した鬼も武芸者も法師も実在したし、それぞれを祀る祠だってそうだ。というか現存していて、この盆地を囲む山中にあり、線で結べば正三角形となる位置に配置されている。

 そして魔力に覚醒していれば分かる事だが、この三角封陣の内側である盆地、すなわち鬼怒恵村に籠る魔力はかなり濃い。

 死してなおこれほどの広範囲に影響を及ぼしているのだから、鬼にしろ武芸者にしろ法師にしろ、相当な実力者だったのだろう。

 そんなとんでも強者を祀る祠とは多分聖域、あるいは鬼門、どちらにしろ禁域の類い。本来なら義介さんの同行なしに立ち入っていい場所ではない。

 …のだが、

(義介さんが餓鬼退治に忙しくしてる今がチャンスだ。次に義介さんがここに訪れてしまう前には、決着をつけなきゃな…)

 という訳で。俺が今訪れているのは、その三つある祠の一つにあたる。

「罰当たり覚悟で来たけど…」

 その祠は前世、義介さんに見せてもらった時とは全く違う景観となっていた。
 例えば鳥居。古い祠と同じだけ時を経ているのだから同じだけ古く、記憶の中では色も殆んど剥げ落ちてたし、そもそもひとつしかなかったはずだ。それが…

「増殖してるし…」

 今や新品同様に朱く染まっているだけでなく、増殖して連なっている。その先に、祠があり、『鬼』の怒りを表現しているのか、怪しげなオーラを立ち上らせていた。その禍々しさに俺は、

「はいはい、怖い怖い、」

 と不真面目に感想を送りつつ、一つ目の鳥居をくぐった、その瞬間。

「お、」

 辺りが暗くなった。…が、これも

「お約束ってやつだな」

 暗い中目を凝らすと、鳥居がこうも新鮮に朱いのはひび割れた所から溢れだした血?のような液体に染められたからだと分かる。
 その液体は地面も…というかこれまた前世ではなかったはずの石段を濡らしていた。
 そのせいで結構滑りやすくなっている。忌々しく思いながら一段一段踏みしめ、鳥居を一つくぐるたび、例の赤い液体が糸を引きつつ垂れてくる。
 そうなると俺まで赤く濡れてそぼってもう…『サイキックお見舞いしたろか』って感じに──いやすまん。ここはプロム会場ではなかったね。(※わからない人は映画愛好家もしくはスティーブン愛好家な誰かに聞こう!)

 とにかく。

 凄く気持ち悪い事になってんだが【強排泄】の影響で既に汚物同然となってる俺には今更だ。

「ダンジョン化してこうなってんだろうけど…」

 これは、ただの演出。
 こけおどしの類い。

 よく見ればどの鳥居にも同じ位置、同じ形のひび割れがあり、コピー&ペーストよろしく配置されたのだと分かる。
 これだけじゃない、石段や禍々しいオーラや急に暗くなった事にしたってそうだ。こちらの不安を煽る舞台装置に過ぎない。

 その証拠に、魔食によって強化された嗅覚が『血の匂いはしないし毒もない』と教えてくれるし、『英断者』も『イったらんかい』とばかり煽ってくる。

 こういう時のこういったサポートは心強い。まだ十分な準備が整っていない事は重々承知の上で来たからな。独りで挑むのは正直、心細かったのだ。

 それでも敢行した理由は、前世の記憶で『鬼』の狙いが何であるかを知っていたからだ。
 だからこうして、この不気味な風景が何の効果を狙ってのものか分かるし、冷静でもいられる。

(…そうだ。これも心理戦の内)

 『鬼』との戦いはもう始まっていて、こんな術にハマっていい段階じゃ、まだない。…なんて思ってる内にもう、石段を登り切ってしまった。
 祠はもう目の前にある。中を覗けば水晶玉のような…

「…ていうかなんだか見覚えが──て、おい。なんでダンジョンコアが外にある?」

 普通、ダンジョンコアといえばダンジョンの最深部で厳重に守られるもので、ダンジョンボスですらこれを守る番人に過ぎない。つまりはダンジョン唯一の弱点にして探索する者にとっては最終目標となる存在。
 
 つまり、これを壊せばダンジョンは滅びる。

 あっけなくもここで攻略完了…なんてのはいかにも安易な考えだ。これはあからさまな罠。で、あるのに攻撃する俺。

 いや、『英断者』が『殴っていいよ』って感じ出すからさ──ガギンッ!

「、、っ、痛ぇ~、やっぱなぁ~」

 手が痺れただけだった。コアらしきそれを見れば、傷ついた様子は全くない。

「オブジェクト化、してるのか?」

 と、もう一度そのダンジョンコアらしきものを探った瞬間、それは起こった。


 ──ブンっ!


 暗転する視界──転移させられた!?



「…くっ、そ…ッ」

   慌てるな、俺…っ!


  ・

  ・

  ・

  ・


  「眩しい…」


 転移した先は明るかった。さっきの急に暗くなる演出は、こうして明暗の落差を生むためか?もしそうならやる事がいちいちセコい、もとい細かい。マメとも言う。

 その光にもようやく慣れてきた。

 そしてまず見えたのは天井?だろうか。無駄に高く、光源らしきものはない。なのに無駄に明るい

「っていうのはダンジョンあるあるだったか」

 …とか言ってる場合じゃなかった。どうやら俺は横になった状態で召喚されたらしい。それに気付いて慌てて起き上がる。そして周囲を見渡せば部屋の面積も無駄に広く──「って、それどこじゃないだろこれ…っ!!」


「「「「がぎゃっ!?」」」」

「「「「げがっ!?」」」」

「「「「ぎゃひひ!」」」」


 全身が粟立った。大量の殺気が一気一斉に俺へと注がれたからだ。

「マ…ジか、」

 その部屋は、数百もの餓鬼で埋め尽くされていた。


=========ステータス=========


名前 平均次(たいらきんじ)


MP 7250/7250


《基礎魔力》

攻(M)110 
防(F)25 
知(S)66 
精(G)13 
速(神)130 
技(神)106 
運   10

《スキル》

【MPシールドLV7】【MP変換LVー】【暗算LV2】【機械操作LV3】【語学力LV2】【大解析LV2】

【斬撃魔攻LV7】【刺突魔攻LV8】【打撃魔攻LV9】【衝撃魔攻LV9】

【韋駄天LV7】【魔力分身LV3】

【回転LV5】【ステップLV5】【溜めLV4】【呼吸LV6】【血流LV6】【健脚LV5】【強腕LV5】【健体LV4】【強幹LV6】【柔軟LV5】

【痛覚耐性LV7】【負荷耐性LV6】【疲労耐性LV6】【精神耐性LV8→9】

【魔食耐性LV3】【強免疫LV3】【強排泄LV3】【強臓LV3】【強血LV3】【強骨LV1】

《称号》

『魔神の器』『英断者』『最速者』『突破者』『武芸者』『神知者』『強敵』『破壊神』『グルメモンスター』

《装備》

『鬼怒守家の木刀・太刀型』
『鬼怒守家の木刀・脇差型』

《重要アイテム》

『ムカデの脚』

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 第二層はここまでとなります。

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