217 フィオナ、サロン内にて②
「そうねぇ……」
ライラに問われると、フィオナはその少し長くなった銀色の髪の毛を撫でた。
フェン、ライラ、オルハンの3人が、色鮮やかな流行りものの服を着こなしている中、フィオナは相変わらず、黄土色の胸当てと腰巻きのみで、肩、お腹、太ももむき出しの褐色肌が見える、露出度高めの出で立ちだった。
そして、その厚めの唇で、話し始めた。
「フェンの言うとおりじゃないかしら。去年、この国のトップ、公爵達による中央会議で、キャラバンの報酬額上昇の法案が決まって以来……」
「当時からキャラバンやってた私らは、やったラッキー!って、思ったもんよね!」
ライラが笑顔で言った。
フィオナはうなずくと、続けた。
「あれ以来、キャラバンになる若者の数が二次関数的なペースで増え続けているわ」
「うん」
「いま、メロの国はじまって以来のキャラバンの多さになっている。一種のブームってヤツかもね」
「……ブームか」
ここまでフィオナの話を聞いていたフェンが、顔を上げた。
「違和感、たぶん、それだと思う」
「えっ、それって?」
ライラが問うと、フェンは答えた。
「なんていうか、メロの国内でキャラバンという存在が、妙に美化されている気がするんだ」
「俺はむしろ、やっと俺たちのことを国が認める気になったかって、思うけどな!」
オルハンの大胆な言葉に、フェンは思わず苦笑した。
「はは……、そういう見方も、あるかもだけど」
「だろ?」
「ああ。……でも、このブームは、ともすれば操作されている可能性もある。……そう、言いたいんだろ?フィオナ」
「……」
フィオナは無言で、フェンにうなずいた。
「操作、されている?」
オルハンが難しい顔をしている。
「なによそれ。誰が、なんのために?」
ライラが言ったが、そこにいるみんな、う~んと考え込んでしまって、答えられる者はいない。
やがて、フェンが口を開いた。
「分からない。でも、このブームが操作されたものであるにしろ、なんにしろ、一大事であることは、間違いないと思うんだ。それこそ……」
するとフェンは、フィオナを見た。
「公爵令嬢が、キャラバンになるくらい、ね」
「……」
無言で、フィオナもフェンを見つめ返した。
「大丈夫だ、安心しろ、フェン」
オルハンがフェンの言葉を否定した。
「ルナは、俺が、守る」
「……うんっ?」
フェンが、そういうことを言ってるわけでは……という表情で、オルハンのほうに振り向いた。
「なに言ってんの、コイツ……!」
ライラも、ドン引きした顔で、オルハンを見ている。
「……ぷふっ!」
フィオナが笑い出した。
「な、なに?オルハン、アンタ、ルナのことを?」
「おい!な、なにがおかしいんだよ、フィオナ!」
「私、そういうの、首突っ込まないほうだけれど……残念ながら、脈なしよ、オルハン」
「なっ!?」
「それだけ言っておくわ。女ってね、別に好きでもない男から守られても、嬉しくなんてないのよ」
「おい、フィオナ、それってどういう……!!」
――キィィィィ。
と、話しているところへ、ウテナが入ってきた。