私とあいつ
ぴと、ぴと、ぴと
歩くたび髪から雫が垂れて地面に落ちる。
空は暗闇に包まれていて、街灯だけが通路を照らす。
そして私は今日も聞く。
「ネエ、ワタシ、キレイ?」
答えがYESでも、NOでも、笑いながらそいつを食べる。
そう、これはただの娯楽だ。
***
「はぁ、はぁ、はぁ…何だ…夢か」
背中に汗がぐっしょりとまとわりついていて気持ちが悪い。
最近、名前も知らない『誰か』の夢を見る。
それが『誰』なのか『どれ』なのかはわからない。
とりあえずびしょびしょの服を着替えに脱衣所へ向かう。
汗がぴとぴとと落ちる音で、またも夢を思い出す。
脱衣所につくと、とりあえず服を脱いで、体を洗う。
全然気づかなかったが、髪も濡れていたようだ。
やっぱり、怖い夢はあんまり見たくない。
衣類を洗ってからは寝る気にはなれず、ちょっと、いや、だいぶ早めの朝ご飯にすることにした。
窓からヒュー、と風が吹き抜ける。
そういえば昨日は疲れてたから、窓を開けっ放しで寝ちゃったのかもしれない。
なんか盗られてたらいやだなあと思いつつ、少し寒いので窓を閉めに行く。
「うわっと…」
窓の近くまで来たとき、床が濡れていて滑りそうになった。
昨日の夜、雨かなんか降ったのかな。
チーン
そこまで考えたところで、レンチンしていた朝ご飯が出来上がる。
フーフーと味噌汁を冷ましつつ、味噌汁をパクリ。
続いてご飯をパクリ。
そんな調子で食べていると、すぐに朝ご飯はなくなった。
眠い。
もう一眠りしようか、とベッドに戻ると、そのまますぐに眠りに落ちた。
そういえば仕事にいかなければ。
気がつくと時刻はもう6時だった。
携帯を見ると、着信が6件きている。
『今日は休むのか?』
不在着信
不在着信
不在着信
不在着信
『休みってことにしとく』
私は慌ててもう一度時間を確認する。
『18:09』
スマホを確認してみると、夜の6時だということが判明した。
あちゃーと頭を抱えるとともに、課長の無駄な着信数への苛立ちが募ってきた。
カチョウイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイラナイイライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ
ああ いらいらする
いらいらする
課長は優しい?そんなわけがない
ふざけるな めんどくさい 気持ち悪い
コロスコロスコロスコロス
ソウダ
私は思い出した。
自分が何だったのかを。
キテモラエバイインダ
ワタシはマスクに手をかける。
そして、異様に大きく開いた口があらわになる。
ワタシノナカノ『カイブツ』ニ