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出会い

「結構あっさりだったねー」

「ほんとにそれ。だれも泣かないとかみんな薄情すぎねー」

「そういうあずさもないてないだろ」

「だってうち、皆と一緒だし。」

その言葉にみんなうなずく。

「卒業式も終わったことだし、久々にあの公園で野球しないか?最近みんな素振りとか投げ込みしかしてないようだし。」

突然か、それともずっと考えていたのだろうか。

ゆなの提案にみんな二つ返事で賛成する。

「じゃあ、ごはん持ってきて集合ね。」

私の声に、みんな家に駆けだしていった。

***

3月なのにもかかわらずじりじりと照り付ける太陽のもと、自転車をこいで私たちの思い出の公園に向かう。

そうだった、あの日も、こんな季節外れの暑さだった。

***

「お弁当は?」

「いらない!」

そういうがいなや家を飛び出して波風公園に向かう。

自慢のティーとバットを引っ提げて。

「よっ ほいっ」

掛け声に合わせて、カキーンと気持ちのいい金属音が響く。

まだ飛距離は出ないけど、バットの芯には当たる。

あふれ出る汗をタオルで拭って、水を飲む。

「あーーあっつーい」

「野球、好きなの?」

独り言をつぶやくと、上からにゅっと影が出てきて、話しかけてきた。確か、同じ保育園にいたはず。

「うん、好き。」

「ちょっとだけ、野球しない?ほかに2人野球好きな子知ってるんだけど。」

「いいよ。やろ。」

最初はぎこちない会話だったけど、他の2人がくる間話してるうちに、だんだん打ち解けたのをよく覚えている。

確か、話しかけてきてくれたのは、みずだったっけ。

「お待たせーみずー」

「おっまたー、、、っとその子は??」

遅れてやってきた2人は、私を見て驚いてるようだ。

「ふっふっふ、野球、しない?」

「「えーーーやるやる!!!」」

みずの不敵な笑いと、2人のきらきらした笑顔が面白くて、私はプッと吹き出してしまった。

そこからは、2人とも打ち解けて、日が暮れるまで野球をして遊んだ。

***

そっか、そういえば甲子園に行くって約束したのも、初めて会った時だったっけ。

今思うと、初めて会った子となんて約束してんだって思うけど、それがあったから今があるって考えると、やっぱり約束しててよかったなって思う。

「おーいかえぽん。どこいくんだーーーい」

突然後ろから聞こえた声に、キキッとブレーキをかけて止まる。

色々思い出してるうちに波風公園を通り過ぎてたみたいだ。

「ごめーん」

急いでUターンして公園に入る。

周りを見るが、まだゆなしかきてないみたいだ。

「かえぽん、とりあえずキャッチボールでもしとかないか?」

「やろやろ」

早速グローブとボールを取り出してキャッチボールを始める。

私とゆなは、実はおんなじ色のおんなじグローブを使っている。だから、グローブにそれぞれKとYって書いてわかるようにしてる。

もちろん、私がYで、ゆながK。

みずとあずさからは逆だろ、ってつっこまれたけど、私たちは、これがデフォルトだから仕方ない。

パシッパシッっとミットにボールが当たる音が心地よい。

「てゆーかさ」

ゆなが何か切り出そうとしたところで、みずとあずさがやってきた。

「ごめーん、遅れたーー。」

2人は、自転車をビュンビュン飛ばして公園に入ってくる。

ゆなの方をちらっと見ると、口に手を当てて、シーというポーズをしていた。

多分、ゆなにしては珍しく弱気なことでもいおうとしてたんだろう。

「よーし、野球するぞー!」

何にも気づいてない、という風に元気に言って、ラインを引きに、私は走って行った。

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