564 ただですむわけがない
おばあちゃんが飛ぶのをやめて走るとすぐに
『まずは幅十センチの平均大だ。ただし、山あり谷あり』
『⋯激流あり』ぼそ
最初の障害物です!
『『『え?最後ゲンさんなんて?』』』
司会のらんちゃんたちが聞き取れなかったのは?
『あらあらまあまあ?平均台って真っ直ぐ水平じゃないかしら?親方たち凝りすぎじゃないかしら?私たちはヤギじゃないのよ?』たたたたっ
『この細い橋は渡りにくいな』タンタン
『そうだな。細すぎるし、爪がたちにくい』タタンッ
『ハク、気をつけてね⋯あっ』
『わああ~』
『ハク君大丈夫ですか!?』
確かに幅は十センチだけど平かと思えば急な上りになったり、すべり台並な下りになったり⋯いや、ハクが滑り台の犠牲に
『なってないよ~大丈夫~』
『『良かった』』
白雪おばあちゃんとイヒカ様一安心⋯だけど
『気をつけろ!』たんっ
『橋が消えるぞ!』たんっ
『『『え?』』』
持ち直してまた坂を登った途端
『わああ~』
『きゃっ』
『うわっ』バサッ
橋が消えた⋯三メートル位プツッと
そして
ジャーぐるぐるぐる
『わああ~』ぐるぐる
『きゃああ~』ぶくぶく
『な、なんですか』ばさばさ
突然現れた水の渦にハクと白雪がっ
これには応援してたみんなも
「はくーっしらゆきーっ」
ぴゅきゅーっ『『きゃーっ』』
『『流されちゃったーっ』』
『『『すいこまれちゃったーっ』』』
みゃあ『どこいっちゃったにゃーっ』
『あ!あそこなのだ!』
姫ちゃんの指さす先は⋯
『『何で平均台のスタート地点に?』』
『『さ、さあ?』』
びっくりして心配して、そしたら、呆然とぺしゃっとしてるハクと白雪がなんと平均台のスタート地点に
『『⋯⋯』』ぽたぽた
あ~水浸し
〖しっかり発動しましたね〗しれっ
『はい。簡易転移装置。無事に実験出来ましたね』しれ~
『『『え?聞いてないんですけど?』』』
〖『言ってませんから』〗
『『『ええ~⋯』』』
しれっと司会席に現れたエル様とバートさん。思わぬ情報に司会者のらんちゃんたち、言葉も出ない⋯
〖ふふ。今回、私とバートで簡易転移装置を作ってみたんです〗ふふふ
『まだいくつか仕掛けてありますので楽しみにしてくださいね』にっこり
『『『⋯』』』しーん⋯
会場中が静まり返った⋯
〖ほらほら、まだ終わりではありませんよ〗ふふ
『頑張って下さいね』にっこり
『『『おっかねぇ⋯』』』
『あの仕掛けは私らが置いた時なかったよね』
『『うんうん』』
『スタート直前にあの二人が追加したんだよ⋯止めたんだけどな』
『『『な、なんだと?』』』
『『『なんてこった⋯』』』
おいちゃんのネタばらしにドワーフさんたちの顔色が⋯だって他にもまだ
ごぷっ
『『ぎゃあっ』』
『ギン様っ吹雪様っ』ばさばさ
翼を使って飛んで難を逃れたイヒカ様は見た
『と、とりあえずこの妙な橋は目の前で終わりだ。ハクたちの元へ』
『あ、ああ、そうだな』
ハクたちの元へ行こうとぴょんっと飛び降りた途端、今度は
ごぽっ
『『ぎゃあっ』』
今度はギン様たちが地面に吸い込まれて次の障害物の前に⋯
『『なっ⋯』』呆然
〖ハクたちは大丈夫ですのでどうぞ続けて下さい〗
『ハクたちもそこから始めましょうね』
『『『『は、はい』』』』
『お、恐ろしい』ばさばさ
容赦なく続行されるようです
『鍛治神、止めねぇのかよ』
〖牙王⋯お前、あの楽しそうな奴らを止められると思うか?あの二人だぞ〗
『⋯無理だな。なら⋯』
『無理だぞ』きっぱり
『無理ですね』きっぱり
『そうかよ⋯』じと~
自分たちのご主人様だけど、無理なものは無理らしい⋯
『あらまぁ~凛だけはちゃっかり続けてるわよぉ』
「ふえ~?」
おばあちゃん?
『ほらあそこぉ』
結葉様が指さす方を見ると
『あっ!凛さんくぐるな!跳べ!』
『ちっ』
次の障害のサポーターは親方。待ち構えるのはハードル。おばあちゃんはちゃっかりハードルの下をくぐろうとしたのを見つかってまた舌打ち⋯
『⋯ガラ悪くなってるぞ。いいからこれに触ってくれ』
スタート地点に実は謎のポールとてっぺんに魔石?
『あらあらまあまあ?何かしら?』
『いいから、触れば分かる』
『分かったわ。えい!』
おばあちゃんがそれに触ると
ススススッ
『あらあらまあまあ?』
おばあちゃんの前のハードルだけ
『触った者の身長に合わせて高さが変わる仕組みなんだよ』
まあ、本当はもう少し仕掛けがあるんだが、今はこれだけだな。
『あらあらまあまあ、低くなったわ』
『ああ、だが、高さは統一されてないから気をつけてくれ』
あと、エル様たちが何をしたか分からないからな。
『分かったわ。それじゃ行くわね。ほっほっほっ』
軽快にハードルを飛び越えるおばあちゃん。先を行くギン様たちを追いかける
『ふむ。中々微妙な高さの違いがあるようだな』
『感覚もだ。スピードを殺さず尚且つ一番無駄のない高さで飛ばねばならぬな』
『ふむ、いい訓練になるが、ハクたちにはきついのではないかな』
『そうですね』
その辺は恐らく何かを考えているかもしれんが⋯
そして、
『では、私は先に行かせていただきます。どうやら待つことは許されないようなので』
ぴっこんぴっこんぴっこん
白雪とハクが心配で待とうと思っていたイヒカ様。でも警告するように羽の生えた魔石が黄色く点滅している。
『ええ。先を行ってくださいな。坊や、がんばれるわね』
『うん!ぼくがんばるよ~』
『分かりました。では、お気をつけて』バサッ
『そちらも』
『がんばってね~』
お互いにエールを送って動き出すハクたち。それを見てこちらも
「ふあっおーえんちにゃきゃ!」
ぴゅきゅっ『『そうだった!』』
『おうえんならまかせるぴょん!』
『しょうらいゆうぼうなもふもふがでんじゅするぴょん!』
『まねするんだじょ!』
『あとにつづくんだじょ!』
『さあ、ぽんぽんもつんだめ~』
『おみみつけるめ~』
突然将来有望なもふもふ軍団、ピンクのうさぎもえちゃんたちが現れた!
「あ、あい」
『はい。やっぱりサーヤはうさ耳が似合うわねぇ』うふふ
『『はい。お母さま』』
『かわいいにゃ!』
結葉様とアイナ様たちが次々とちびっこたちにお耳装着!
『なんで』
『おれたちまで』
『私は自前があって良かったです』
『ぼく、いらなくないですか?』しくしく
春陽くん、自前の豹耳あるのにうさ耳付けられた⋯
今日は白い半袖体操着に紺色のカポチャパンツ。だけどおしりには大人めーめーさんの毛を使ったクッションアップリケ!今日はめーめーさんのお顔バージョン!でも、頭にはうさぎ耳なんでもあり!
ひじやお膝にももふもふプロテクターが!
『さあ、やるぴょん!』
『ふれーふれー!』
「ふりぇーふりぇー!」
『『『『『ふれーふれー!』』』』』
ももちゃんたちの号令に合わせて腕をふりふり!
『もっとおおきなこえだすんだじょ!』
『もっとうごきもはげしくだじょ!』
「あ、あい!」
『『『『『は、はい!』』』』』
「ふりぇーふりぇー!」
『『『『ふれーふれー!』』』』
腕をふりふり!腰に手を当ておしりふりふり!腕を上げ縦振り!シェイクシェイク!なんだこりゃ⋯
『『あ~ん♪可愛いですわ~♪』』ぎゅうう
『あらぁ、アイナちゃんとリノちゃん倒れなくなったのねぇ。成長かしらぁ?』
『結葉様の目は節穴かにゃ?』
『鼻血を流しながら度々気絶しては起きてるようだが⋯』
『さすがアルコン様にゃ。正解にゃ。抱き合うことで互いに何とか倒れないように保ってるにゃ』
『正解しても嬉しくはないな⋯』
『あらぁ、やっぱりだめねぇ』
アイナ様たち、大丈夫?
『ハク、飛べるわね?』
『うん!えいっ』バッ
しゅたっ
『上手ね。さあ行きましょう』
『うん!』たたたたっ
「はくーしらゆきーっ」
ぴゅきゅーっ『『がんばれーっ』』
『ととしゃま、ちっかりでしゅーっ』
『『ギン様ーっ』』
『『『ふぶきさまもーっ』』』
「おばあちゃーんっ」
みゃあ『がんばるにゃーっ』
『がんばるのだーっ』
みんながんばって応援!
『先が見えたな』
『ということは?』
『あらあらまあまあ、また転移かしら?』
あ、おばあちゃんいつの間に?
とか言ってる間に
くにゃっ
『『やっぱりっ』』
『あ~れ~』
吸い込まれた
『『『あ~まただわ~』』』
らんちゃんたち、既に役割忘れてない?
『次は何ですかね⋯』
イヒカ様が先を行くギン様たちが再び消えたのを見て呟いている。
『『何だこれは?』』
『あらあらまあまあ、懸垂?あのマットは何かしらね?あとあのラインは?』
見覚えあるような?
『ここから人化コーナーだよ。人化してからここに触れておくれ。あ、半獣の姿は⋯』
『『ん?』』
「うきゃーっもふもふもふもふーっ」ばたばたばたっ
『こ、こらサーヤっイテテ』
『あ、あばれないでっイタタ』
「いやぁ~んっもふもふもふもふもふもふーっ」ばたばたばたっ
『サーヤちゃんがああなるから完璧な人化にするようにってさ』
『『了解した⋯』』
「うにゃ~んん、もふもふ~ぅ」へにゃん
『『お、大人しくなった⋯』』
ちょっとの間にクゥと春陽くんぼろぼろ
『えっと、懸垂はギン様と吹雪様は百回だね。凛さんは八十回。腕の力だけで体を持ち上げて顎を魔石に当てたらカウントが減るからね。誰が一番に終わるかねぇ。終わったら次はあっちだよ』
『『分かった』』
『負けぬぞ息子』
『そのまま返すぞ親父』
バチバチバチっ
『私は少なめなのね。よいしょ』カチカチカチカチっ
勝手知ったるおばあちゃん、バチバチやり合ってるギン様たちをほったらかして高速懸垂!
『『あっ』』
慌てて参戦!
『あらやだ、盛り上がる筋肉が中々じゃない?』
『へぇ~上半身裸は誰の案かしら?』
『腕派と背中派どっちが多いかしらね?』
司会者思わぬ方向から復帰
『おばあちゃんすごい』
『だな。速すぎだろ、ありゃ』
『ふむ。私の筋肉も中々美しいと思うのですが⋯』
大ちゃんたちまで降って湧いた!
「おばあちゃん、しゅご~」
見えないよ?
ぴゅきゅっ『『あっイヒカしゃまきた!』』
『ととしゃま~』
『ふむ。人化、久々ですね』きらっ
『久々すぎて耳が消せませんね』
『背中の羽もね⋯』
『え?あっ』
「ふあ~あああっ」きらきら
『わああ~でしゅう』きらきら
「てんちーっふわふわふわふわーっ」ばたばた
『ととしゃまーっかっこいいでしゅーっ』ばたばた
『『うわあっ』』
『『鹿の子ちゃんまでーっ』』
『あらぁ、仕方ないわねぇ。絹ぅ』
きゅるる『分かった』しゅぱっ
「うにゅ~っ」くねくね
『うわぁんでしゅ~っ』びたびたっ
『『た、助かりました』』
『『押さえやすくなりました』』
サーヤと鹿の子ちゃんの簀巻き出来上がり
『ああっ鹿の子っ私の天使がっ』
『イヒカ様、やらないと終わらないよ。はい、百回ね』
『鹿の子、父様は頑張るぞ』カチカチカチカチ
イヒカ様が親バカを発揮したところで
パンパカパーン
『あらあらまあまあ、終わりしら?』
なんか音が
『おや、凛さんが一番かい。今度はこっち。腹筋だよ』
『あらあらまあまあ、ここに足をひっかけて、やっぱりあごをここに当てるのね。回数は八十回、同じね』
『さすがだね。その通りだよ』
『じゃあ、せーのっ』かちかちかち
『また高速⋯凛さんやっぱりただもんじゃないねぇ』
おかみさん、諦めの境地⋯
『くっ、負けるかぁ』ぐぐぐ
『こちらのセリフ⋯だ』ぐぐぐっかちっ
『やっぱり終盤は普通はこの位になるよねぇ』
パンパカパーンッパンパカパーン
『僅差でギン様、まあ、ほぼ同時だね。はい、次はこちらだよ』
『くっ、この位の差、差とは言わぬ』よろ
『ふっ、負け惜しみだな』よろ
『はいはい。頑張っとくれ。九十回だよ』
あ、少し減った
『ふ~到着~』
『え?人化?人前でするのは久々ね。練習しといて良かったわ』ぴかっ
『わ~おばあちゃん、きれいだねぇ』
『あら、ありがとう。あなたも可愛いわよ』
『あらあらまあまあっ』カッ
ぴょんっ
『きゃあっ』
『おばあちゃん~?』
腹筋してたはずのおばあちゃんがっ
『凛さん!?まだ⋯あ、終わってるよ』
『り、凛さん何を!?』
『ひどいわひどいわっ白雪さんまでっうらやまけしからん山が~ずるいわずるいわっ』ぺしぺしぺしぺしっ
『ええ?』
『おばあちゃ~ん』おろおろ
『凛さん⋯』はああ
ジーニ様いなかったから、久々だね
「おばあちゃん⋯」
『おばあちゃま?』
『あら、あまりの事態に大人しくなったみたいねぇ』
きゅるる『ほどく』しゅる
簀巻き解放⋯
〖あ~クマがやるとああなんだな〗
『こちなら、まだ可愛いもんだよな』
「ふえ?」
それってまさか⋯
〖やってたぞ。天界でも魔神たちに〗
『わしづかみだったよな⋯』
「あわわわわっ」
『『わしっ』』ぼんっ
『『づかみ⋯』』じっ
ヴァル様と牙王様の言葉に純情なクゥと春陽くんは顔を真っ赤に、フゥと山桜桃ちゃんはじぶんのまだ控えめなお山を見つめている⋯そして
「じーにしゃま、しあしゃま、もちかちて、ちりゃにゃいちと、おばあちゃんが、ごめしゃい」
サーヤが天界のジーニ様たちに向かって土下座していた⋯
『このこのこのこのっ』ぺしぺしぺしぺしっ
『り、凛さんっ』
『おばあちゃ~ん』
あ~あ
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