第四十九話 今後の話(2)
円香さんからの提案を真剣に考えてみる。
私にとって、デメリット・・・。存在しない。それ以上に、
「円香さん。私、お金が沢山・・・。あります」
「貴子さん。これからも、増えるぞ、今の倍・・・。いや、10倍くらいにはなる」
「え?今でも、信じられないくらいですよ?私、お金、そんなに使わないですよ?」
「ははは。そうだな」
私の言い方が悪いのか、円香さんと孔明さんが笑ってしまっている。
「あの・・・。円香さん」
「なにかな?」
「呼び捨てにしてもらえると嬉しいです。なんか、”さん”付けにされると・・・」
「そうか?」
「はい」
「わかった」
「それで、円香さん。私、市内に庭付きの家を買おうかと思っています」
「え?今の家を売っちゃうの?」
茜さんが横から話に参加してくれます。
「いえ、今の家は、そのままにして、市内に・・・。ダミーの家?違いますね。登記とかしておく家を買おうかと思っています。庭があれば、家族も連れて行けます。ギルドの職員になれば、住所とかオープンになりますよね?その時に、今の家では・・・。ちょっと・・・」
茜さんが納得してくれました。
あの家に人を招くのは不可能です。茜さんが初めてだから、浮かれていましたが、後で考えてみると、無謀だったとわかりました。
「茜。貴子のサポートを頼めるか?」
「え?」「!!」
円香さんが、茜さんに私のサポートを依頼しました。
それは、解るのですが、真子さんが驚くのは何故なのでしょうか?
「お兄ちゃん!」
「わかった。わかった。茜嬢。真子も一緒でいいか?家は、真子に全面的に任せる」
孔明さんは、真子さんの考えが解るのでしょうか?
私の家探しと一緒に真子さんと孔明さんが住む家を探すことになりました。
予算の話になったのですが、私は予算が解らないので、茜さんにお任せすることになりました。
そうだ!
「円香さん。ギルドの職員になるのは、私でも大丈夫なのですよね?」
「大丈夫だ」
この話からが、円香さんのデフォルトなのでしょう。
少しだけ偉そうな雰囲気がすごく合っている。女傑という言葉がピッタリな感じだ。
「ありがとうございます。でも、ギルドに渡した情報やドロップ品がお金になるのですよね?」
「なる。それも、かなりの金額だ」
「私は、ギルドから情報を買うことになっていると思います。ドロップ品とか、どう使われるのか教えてもらえるのでしょうか?」
円香さんが少しだけ困った表情をしてから、孔明さんを見ました。
何かあるのでしょうか。孔明さんは、真子さんを見ています。何か、真子さんに関係していることなのでしょう。でも、聞かせたくない内容なのでしょうか?
「ライ。私の分体と一緒に、茜さんと真子さんと家を決めてもらえる?候補を絞ってくれるだけでも嬉しいかな?」
ライが、私の膝から床に降りてから、人に戻ります。
私の分体を持っています。真子さんが、
「ライ。真子さんに、分体を渡して、茜さん。家の候補は見られますか?」
茜さんも事情を知っているのでしょう。
嬉しそうに、分体を抱えた真子さんを見てから、孔明さんと円香さんを見ます。
「大丈夫よ。端末を広げたいから、ソファーで話をしましょう」
「お願いします。家は、広くなくてもいいので、庭があって、出来れば、池が作れるくらいだと嬉しいです。木が植えられて、通りから見えにくい場所だと最高です」
「わかった。孔明さん。予算は?」
「茜さん。真子さんの家の予算は、後回しでお願いします」
私には少しだけ考えがあります。
受け取ってもらえるとは思えないけど、私の精神の安定を目的とした行いです。巻き込まれてもらいます。
「茜嬢。俺は適当なマンションでいい。真子が望む形にしてくれ」
孔明さんが、考えていることを先読みしてくれました。
茜さんと真子さんとライがソファーに移動したのを確認してから、テーブルに結界を発動させます。
「遮音だけでいいですか?」
「お願いする」
円香さんが苦笑しながら、答えてくれた。
結界に遮音を付与する。これで、外に声が漏れない。
「これだけでも、道具に出来ないか?」
「孔明。その話は、お前の話が終わってからだ」
「あぁ・・・。どこから話を・・・」
孔明さんの讒言に似た独白を聞いた。
思っていた以上に、クズが存在しているようだ。
孔明さんの話が終わってから、円香さんが話をしてくれました。
ギルドとして、クズにちょっとした仕返しをする方法を教えてくれた。
すごく面白そうだ。
「それなら!孔明さんに渡す魔石やドロップ品は別に用意しましょう」
「え?」
「真子さんの治療にお金が必要だから、ギルドから持ち出した。買い取ってもらいましょう」
「いいのか?」
「はい。魔石は、作れますので・・・。あっ。買い取りの時に、契約で縛れますか?」
「契約?」
「はい。提供するのは、ゴブリンの魔石程度の大きさなら、真子さんが訓練次第で作り出せると思います。その魔石を、市場価格の半値くらいで、提供する。クズたちは、孔明さんが持ち込む魔石の全てを買い取る契約にする」
「ははは。恐ろしい事を考えるな。孔明。面白そうだ。できるか?」
「・・・。奴がターゲットならできる」
「くっくくく。貴子。魔石は、どの位、準備ができる?」
「え?」
「ん?」
「正直に話をすると、ゴブリンの魔石程度の大きさなら、いくらでも用意ができるので・・・。家の子たちで、小さい子たちは、魔石が作り出せるのですが、ゴブリンの魔石程度なので、練習をして、素質のある子だけ、連続で作ってもらって居たので・・・。1万個くらいなら、明日には準備が出来ます。10万個でも、2-3日貰えれば用意ができます。その魔石は、孔明さんに買い取ってもらいたいのですがダメですか?」
「はぁ?」
数で驚かれた。
家の子たちの練習にもなるから、魔石を作るのは問題にはならない。処分に困るので、あまり作っていなかっただけだ。売り先があるのなら、遠慮なく練習ができる。家族も喜ぶ。孔明さんに、卸値で売って、孔明さんがクズに高値で売れば、お金も稼げる。
「いや、いや、100個もあれば十分だぞ?」
「え?そんな少なくて大丈夫ですか?」
「ははは。大丈夫だ。そうだな。孔明。貴子からの調達で、1万個くらい売りに出すか?そのうえで、魔石の作り方を公表する。面白いと思わないか?」
「そうだな。日本ギルドの奴らは、困るだろうな。顧客にも言い訳ができない状況になるだろう」
二人が少しだけ黒い笑いを漏らす。
よほどクズな組織なのでしょう。
「あっ!」
「どうした?」
「魔石の提供には、大きな問題は無いのですが、魔石が作られるようになって、大量に提供されると、魔石で生計を立てている人たちが困りませんか?」
「ははは。大丈夫だ。魔石の利用方法は、まだ研究段階で、やっと魔石を組み込んだ道具ができ始めているだけで、それも偶然の産物だ」
「え?そうなのですか?」
「あぁ驚くだろう?各国が、いろいろ研究をしているけど、成果が出ているのは、ごく一部だ。それも、スキルを持っていることが解る程度の物だ。貴子から提供された、鑑定ができる魔石や、結界が張れる魔石は、存在していない」
「へぇ・・・。簡単に出来ましたよ?成果を隠しているのでは?」
「その可能性もあるが・・・。いや、可能性としては、ほぼ無いと考えている」
「何故ですか?」
「魔石の数が圧倒的に足りないからだ」
「え?足りない?」
円香さんの話は驚愕でした。
魔石のドロップ率が、そんなに低いとは思えなかった。私たちが魔物を倒すと、100%とは言わないけど、それに近い確立で魔石がドロップする。何か、理由があるのかな?
孔明さんを追い詰めた組織へのちょっとした嫌がらせ計画は、開始されることになった。
孔明さんと円香さんが、相手に渡すためのリストを作っているというので、見せてもらった。
そのうえで、魔石やドロップ品は、品質が悪くて、破棄するか、ライに吸収して貰おうと思っていた物を提供することにした。
品質のいい物は、ギルドでオークションを行うことに決まった。
円香さんが凄く楽しそうにしている。
そして、日本ギルドと作った者たちが・・・。まだ証拠はない。