第32話「食う事しか頭にねぇのかよ」
水族館へと着いた焔火と麗水は巨大な水槽の中で高速で泳ぐ無数のクロマグロを観覧していた。
「うわ~!めっちゃ速い!」
クロマグロ達に向かってそう呟いた麗水。
「ツナにして食いてぇ……」
クロマグロ達に向かってそう呟いた焔火。そしてその後2人は移動して次は水中をゆっくりと浮遊していたミズダコを観覧し始めた。
「うわ~……でっか~……」
ミズダコに向かってそう呟いた麗水。
「たこ焼きにして食いてぇ……」
ミズダコに向かってそう呟いた焔火。そしてその後2人は移動して次は水中でどっしりと静止していたタカアシガニを観覧し始めた。
「うわ~……でっか~……脚長~……」
タカアシガニに向かってそう呟いた麗水。
「しゃぶしゃぶにして食いてぇ……」
タカアシガニに向かってそう呟いた焔火。そしてその後2人は移動して次はサンマの大群を観覧し始めた。
「うわ~……すごい数……」
サンマ達に向かってそう呟いた麗水。
「塩焼きにして食いてぇ……」
サンマ達に向かってそう呟いた焔火。そしてここで麗水が我慢の限界かの様な表情を浮かべながら焔火の方へと顔を向けた。
「さっきから食う事しか頭にねぇのかよ!!」
焔火に向かって激しいツッコミを入れた麗水。実は彼女はミズダコの時点で焔火にツッコミを入れたかったのだが、折角自分に付き合ってくれている彼に対してそんな事するのはなんとなく失礼だと思い、我慢していたのだ。しかし終わる事のない焔火の食への連想にとうとう我慢の限界がきて遂にツッコミを入れてしまったという訳だ。そしてそんな彼女に対して焔火は若干申し訳なさそうな顔を浮かべながら言う。
「ごめん……俺今めっちゃ腹減ってるなう」
「お昼食べてないの?」
「いや食べた、白米800gとサンマ4匹と茹でた鶏ササミ600gと玉子焼き10個と筑前煮とポテトサラダとホウレン草のおひたしと大豆の甘辛煮和えとプリン8個」
「ど、どんだけ食ってんの!?というかそんだけ食ってもう腹減ってんの……!?」
「いや~、俺生まれつきすげぇ代謝が良くてさ~、すぐ腹減っちまうんだよな~、全く困っちゃうよな~」
「そうだったんだ……じゃあどっかで何か食べる?」
「ああ、悪いな」
その後2人は水族館内のフードコートへと移動した。そしてそこで麗水は蜂蜜ソフトクリームを買い、一方で焔火の方は特盛海鮮丼を5つ買った。
「いや~、んめぇですな~」
焔火はテーブル席に座って幸せそうな顔で特盛海鮮丼を頬張っていた。そしてそんな焔火の正面席に座っていた麗水は蜂蜜ソフトクリームを舐めながら食事を頬張る彼の事をジ~ッと見つめてた。
「代謝が良いとはいえ……よくそんな食えるよね~、マジな話1日の接種カロリー現役の力士を上回ってるんじゃない?」
「ハハハッ、ありえるかもな~」
麗水の発言に焔火は軽く笑い、その後どんどんと食事を進めた。
「───ふい~……食った食った!これで後5時間くらいは持つな!多分!」
焔火は20分程で特盛海鮮丼を見事に綺麗に完食した。そして使い終わった食器を店に戻しに行き、再び麗水の元へと戻ってきた。
「さてと、腹も膨れたところで次は何見に行こうか?」
焔火はスマホをいじっていた麗水にそう語りかけた。
「え?食べたばっかなのに平気なの?ちょっと休憩とかしなくていいの?」
「いや、平気平気、無問題(モウマンタイ)」
「そう?ならいいんだけど……ん~……じゃあ……あれ見に行こうよ、シーラカンス」
「おお~!絶滅種か!いいね!行こう行こう!」
2人はシーラカンスを見るべくその場を後にした。