第23話「ボマー五条」
焔火が麗水の入院している病院を出た頃、渋谷にある人気のない公園の中を1人の薄毛の男性が歩いていた。すると薄毛男性の近くに生えていた木の裏から突然顎の長い天パの男が現れて薄毛男性の前に立ちはだかった。
「へへへ、ハゲ見~っけ!」
天パ男は薄毛男性を指差しながら嬉々とそう叫んだ。面識のない謎の天パ野郎の急な無礼発言に薄毛男性は怒り全開で額の血管をブチンと切れさせた。
「ハゲだと!?失礼な!!いいかね君!?20年前の法改正によって今は"馬鹿"と言っただけで侮辱罪で捕まる時代なんだよ!?"ハゲ"もまたしかり!!私は見た目柄こういう侮辱に備えて常にボイスレコーダーを持ち歩いてONにしているんだよ!!つまり先程の君の暴言も録音しているという事だ!!証拠は完璧に押さえてやった!!よって君は逮捕確定!!有罪確定!!震えろ!!」
「長えよハゲ、せめて3行で済ませろハゲ」
「ッッッ!!!キサマァァァァ!!!!まだ言うかぁぁぁぁぁ!!!!」
薄毛男性は天パ男に勢いよく飛び掛かり胸ぐらを掴んだ。するとそれに対して天パ男は薄毛男性に向かってニヤリと不穏な笑みを浮かべた。
「何がおかしい!?」
「デデーン、ハゲ、アウト~」
「は?」
天パ男は自身の胸ぐらを掴んでいる薄毛男性の右胸元にピトッと軽く左手を添えた。するとその直後にボンッ!!と強い爆発が起き、薄毛男性の右半身が吹き飛んだ。それにより薄毛男性は絶命し、そのまた地面に仰向けに倒れた。
「ふ~……ったくよ~……ハゲが気安く触るんじゃねぇよ……ハゲ菌が伝染るだろうが……」
天パ男が薄毛男性に掴まれたところを両手でパンパンとはたいていると後ろから何者かがスタスタと近づいてきた。
「約18時間で28人殺害か……ゲームは順調みたいだな……"五条"」
謎の何者かは天パ男に対してそう言った。すると五条と呼ばれた天パ男はその者の方へとクルッと振り返った。彼の前に立っていたのは両サイドを刈り込んだ黒ドレッドヘアの男であった。
「ああ、順調ですよ"蓬莱"さん」
五条はニコリと笑みを浮かべながら蓬莱という名のドレッドヘア男にそう言った。そしてここで蓬莱は五条にある事を尋ねる。
「五条よ、このまま渋谷でゲームを続けるのか?」
「いや、渋谷のハゲは大方狩り尽くしたんでね……そろそろ新宿に移動してそこでハゲ狩りしますわ」
「今すぐ向かうのか?」
「いや、1時間くらい休憩してからですね、昨晩から一睡もせずぶっ通しでハゲ狩りしてたからちょっと疲れましたわ」
五条は蓬莱にそう言うと近くにあった草原へと移動して、そこで寝そべって仮眠を取り始めた。
「……よくこんな所で寝れるな……」