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巨乳女騎士を添えて~向かう先は玉座の間!?もあるよっ!

 
挿絵


 ◇ ◇ ◇


 俺たちは隠し通路を使い、魔王城の最上階五階へと上る。
 途中、溶岩が敷き詰められた部屋や、死霊でも出そうなほど埃をかぶった隠し書斎など様々な部屋があったが、そこに用はない、俺たちが向かう部屋は一つ。

「かかかかか、覚悟はいいか?」
「ちちちちち、ちょっと、ちょっと、待ってくれ」

 玉座の間、つまり魔王がいる部屋だ。
 重そうな観音開きの門にもっとも複雑な化粧柱、豪華というよりは荘厳で神秘的というよりは禍々しく、畏怖に満ち溢れた魔王そのもののような印象を植え付ける、そんな門の前に、これでもかというほど俺たちはビビり散らかしていた。
 や、やっぱり、俺が思った通り魔王の部屋はノーマーク、魔法も兵士も何もない…まあ、必要がないといった方が正しいか。

「い、行くぞ」

 そして俺はその扉に手をかける――。

「ちょ! ちょっと待て!! …すーはあ、心の準備が…オェ、き˝も˝ち˝悪い」
「しっかりしろ、今からやられてどうする!?」
「ゆ、ユスルナ、はあはあ…ちょっと収まってきた、うむ、これはもうスッと行った方が良いパターンだ、よしッ! もう行くぞ! 開けるからな!!」

 乳山はその扉に手をかける――。

「ウ…オェ、ダメだ、き˝も˝ち˝悪い」
「今度はお前か!」
「テメーの見てたら、俺まで…ダメだ、出る! ゴウェエエエエ!」
「お˝い˝、こ、こんなところで、ゴウェエロエロエロエロ」
「ゲホッ、ケハッ…オエッ、クッサッ! オメーのゲロ臭すぎだぞ」
「おっ、おまおまお前!! なんてデリカシーのない奴なんだ! だいたいゲロなんてみんな臭うものなんだ!」
「イヤ、ソレニシテモ臭スギダゾッ」
「クッ!!!! 臭い!! あー、お前のも相当臭い! 渋谷を凝縮したような匂いだ!!」
「ソンナニ、嗅グナ、オ前ソッチ系ノ趣味デモアルノカ?」
「あ˝あ˝ーーー!!!!」

 乳山は顔を真っ赤にして尚も喚き散らしていたが、俺はそれを無視し、今度こそ、扉に手をかけ、開け放つ。

「行くぞ、変態野郎」
「言われたくない! お前にだけは言われたくない! 脱出したら絶対ぶん殴るからな! 覚悟しろ!」

 俺たちは、難攻不落の魔王城その最上階、魔王の部屋に侵入した――――。

 ギィイイイイイイイイイ、重々しい音を立てて開かれるその扉は、自身の腹に響き渡り、周りの静けさとは裏腹に鼓動が、脈動が、俺の体を揺らした…。
 いや、揺れているのは心臓のせいではなく、吹き出る冷や汗と全身に浮き立つ鳥肌で説明がつく、俺は怯えているのだ、正常な思考を許さないほどの恐怖、こんなのに立ち向かうくらいなら、残党狩りの兵士どもに捕まったほうが良かったのでないかと思えるほどに、その思考に、痛覚が無いはずの脳みそに、鋭い痛みを感じさせる。見てはいけない、触れてはいけない、ましてや出し抜こうなどと常人の考えるそれではない。
 今目の前にいる方は神にも等しい、――魔界を統べる皇。

「こっ、これが、魔王うう…あ? ああ…あ˝あ˝あ˝? ぐっああああぐあああああああああああああああ!?」
「ふーー」

 精神汚染。
 魔王の能力の一つだ、覚悟していたが俺でも相当きつい、乳山は気が付いていないのか頭を抱える手にどんどんと力が込められ、ブチブチッとその薄い赤髪を毟っていた。
 俺は自身の少ない魔力をジャラジャラとはめている指輪の一つ、胎児の形を模した装飾が施されている物に魔力を集中させると、指輪の胎児に細く赤い血管のような文様が浮き出し、すると、徐々にその<恐怖>が薄くなっていくことが感じ取れた、精神を魔法で防御していないと魔王の前に立つ事すらできない、部屋に入る前からその精神汚染の兆候は現れていたが、それがただの能力だと気づいている者は少ない。
 すかさず乳山にも触れると、ほぼすべての魔力を込めて精神防御を分け与える。荒い呼吸が徐々におさまり、冷静さを取り戻した乳山は礼を言うとすぐさま立ち上がり、その<魔王>を見る。

 驚いている、いや、奇妙だと感じているのかもしれない、それもそうだろう、その魔王と呼ばれる者は、大きく絢爛豪華な椅子に座ってはいるが、しかし、そこかしこから出るおびただしい太い管に繫がれ、人型ではあるがその布の切れはしからは皮膚と骨しかないやせ細った肢体、それとは対照的に腹だけが大きく膨らみ、さながら餓鬼のようにぴっちりと皮膚が張りつめ、頭には大きく欠けた両角、そして長く伸びた髪により表情は一切読み取れなかった。
 精神防御のアイテムで余裕を取り戻したらしい乳山は魔王をまじまじと観察していたが、その周り、までは意識が向いていないのだろう。
 改めて周りを見た乳山は、複数人の死体が転がっている事に気が付き一歩後ずさる、「……なん…だ、これは。こんな、ありえない」やはりか、乳山の反応を見て確信した、この床に転がっている多くの死体は、きっととてつもなく強い人間だったんだろう。高級な装備を着て、国宝級の剣や槍、強力な魔法が込められた水晶付きの杖、無数の使われた痕跡のあるアイテム、その全てが残骸となり、その辺りの落ちている石と見間違える程に、ボロボロに、必要なまでに痛めつけられ放られていた。


「アルベき姿になっタ」


 突然、低く地鳴りのような声がこの部屋を震わせ満たした。
 魔王だ。

「な、何だこの声は! 何処から聞こえる!?」
「ソレラの本来ノ姿ダ、醜悪で、醜ク、見苦しイ、今日は二度と見ルコとにナルトは何と我を不快にスるコトダ」

 顔や表情ましてや口などピクリとも動いていないが、乳山を睨んでいることだけははっきりとわかるほど、怨嗟ともいうべき殺気をこちらに向けてきていた。
 乳山はその場で金縛りのように動かなくなり、というか、呼吸、呼吸をしていない!? 見る見るうちに顔は青くなり――、能力じゃないのか!?

「これ以上はマズい! まっ、魔王のジジイ!」
「……。」
「ぷはっ! はぁ、はぁ」

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