26 砂漠をゆく
雲一つない、果てしない、青い空。
日の光が、燦々と降り注ぐ。
この光は、はたして、生命を育む優しい陽の光か、それとも、命を奪い去る容赦のない死の光か。
少なくても、この地のほとんどにとっては、残念ながら後者のようだ。
どこまでも、延々と続く、砂漠。
その砂漠の上を歩く、10頭ほどのフタコブラクダと、4人の男達。
キャラバンの村から出発した、一商隊だった。
ラクダ達は、一頭ずつロープで繋がれていて、綺麗に等間隔で一列に並んで、それぞれの背中には、商隊の荷物のほか、交易のための商品が取り付けられていた。
そして、その荷物を何とも思っていないといったような、澄ました顔で、ラクダ達は優雅に、一歩一歩、前進している。
そのラクダ達の先頭に、ベージュのマントを羽織った男がいた。
「お前ら、もうすぐでサライに到着する。今日はそこで休むことにするから、そこまで頑張れ」
マントの男が、後ろでラクダ達と並行して歩く3人に向かって、言った。
「はい……」
3人は返事した。3人もまた、先頭の男のように、ベージュのマントを羽織り、歩いている。
しかし、元気がない。優雅に歩くラクダ達とは対照的に、肩は落ち、腰は曲がって、生気を感じられない。
この3人、キャラバンの村を出発した当初は、元気よく談笑したり、じゃれ合ったりしながら歩いてたものの、延々と歩いてきた疲れと、いったい、いつまで歩き続けるのかという思いで、完全に気持ちが萎えてしまっていたのだ。
それでも、一行は歩き続ける。
気がつけば、燦々と降り注いできた日の光も、少しずつ傾いてきた。赤みを帯びて、今日という一日を終えようとしている。
歩き続ける彼らの影が、長く、大きくなってきた。
だが、永遠と続くと思われた砂漠の地平線から、石造の建築物が姿を現した。
「おぉ……建物がある」
「すげぇ……」
「蜃気楼じゃ、ないよね?」
「そんな訳ないだろ。どう見ても」
「やった……やった!」
「ついに、たどり着いたんだ!」
3人は、建物が見えただけで感動した様子だった。
「フフっ。ミト、ラクト、マナト。言っとくが、まだ、目的地にはたどり着いてないぜ。……まぁでも、俺も最初はそうだった。砂漠の先に建物があるだけで興奮したもんだ。今ではもう分かってしまっているから、その感情を忘れていたよ」
先頭にいた男は懐かしそうに言うと、前方を指さした。
「あそこが、サライだ。キャラバン達の中継地で、あそこで身体を休めつつ、情報収集も行うぞ」
「はい!ケント隊長!」
生気を取り戻した3人の、元気な声が響いた。
ほどなくして一行がサライに到着した頃には、もう、日は落ちて、空には無数の星が瞬いていた。